422 名前:名無しさん@おーぷん[sage] 投稿日:21/07/19(月)23:41:31 ID:8J.as.L1 仲良くしてた会社の人が明らかにおかしくなって、最後は死を選んだ時。 新卒で入ってきたAという女性がいた。私は彼女より1歳歳上。 私に懐いてくれたし、素直でいい子で優しくて、休みも沢山遊んだ。ディズニーも行った。 そうしていると身の上話もよくするようになった。 母子家庭の育ちで、お母さんが精神的におかしいのだと言っていた。妄想癖が凄くて、恐らく統合失調症だろうと言っていた。 その時初めて統合失調症という病名を知った。 お母さんを病院に連れていこうと四苦八苦したが無理だったので諦めて、ひたすら耐えているんだと言っていた。 しかも奨学金返済が月4万近くに上るので、独り立ちも出来ない。 まあ大変だなあと思って聞いていた。 Aは笑いながら「やんなっちゃいますよー」と笑っていた。 そんな感じで3年が過ぎた。Aはその間に営業頑張って何度か表彰された。私は主任になった。 その頃からAがおかしくなった。 いきなり私用スマホを取り出して、多分友達に電話をかけ、「ちょっと、私に電話した?今仕事中なの」と言い出すことが増えた。 さらに独り言で「なんで誰もかけてないって答えるの?」 とぽつんと呟いていた。 終礼中も突然「すみません!」と謝ってスマホを触るようになって、上司がどうしたかと聞くと 「ずっとスマホがなってるんで止めようと。マナーモードにしてるのに今も大音量で鳴っちゃうし、 すみません、壊れてるんだと思います」 そんな音、私達には全く聞こえなかった。 「聞き間違いだよ」とみんな笑ったけど、Aは「でも、今も聞こえる」と納得いかないようだった。 家に帰って家族に話すと、 「そのAって子、幻聴が聴こえてるんじゃね?」「みんなが聴こえないって言ったのに納得しないって変だよね」 「なんかほっとくとヤバそう」と言われ、やっぱりそうだよねと思った。 だけど調べれば調べるほど接し方がわからなくなった。 上司にも相談したけれど、寝不足なんだろうの一言で一蹴された。 その幻聴がない時は普通のAだった。 だけど次第に、Aは感情的になっていった。 最初は「すみません」と謝ってただけだったのが、スマホを踏んずけて「ああああうるさいなあ!もうほんとすみません」 と言うようになった。 流石に上司もおかしいと気づいたけれど、「頭おかしいから病院行け」とも言えず、上司とAが面談することが増えた。 Aは感情の起伏もどんどん激しくなった。普通の時はほんとに普通なんだけど時々おかしくなり、 そのおかしくなる瞬間の沸騰具合が凄いことになる感じだった。仕事が出来ていたのが不思議なくらいだった。 次第に遊ぶことも減った。 ある日突然Aが、仕事中のみんなに、 「聞こえますか?また電話鳴ってますよね」 スマホは鳴ってなかったし、画面は真っ暗だった。 「いいや?何も聞こえない」 とみんなが口々に言うと、物凄く悲しそうに 「そうですか。聞こえませんか」 と言った。 「うん」と返すともう一度「そうですか。」と言った。 「ありがとうございます。大丈夫です」 とだけ言って、Aは給湯室から出て行った。 その翌週、Aが出勤してこなかった。寝坊かと電話したけど電話も出ない。 親に電話すると、もう家を出ましたけど、そちらに行ってないんですか!?とむしろ驚かれた。 Aは行方不明になった。 警察に届け出たことは勿論、会社内は大騒ぎだった。 私たちは仕事で外回りに出る営業だから、時間に余裕があれば外回りついでに町中駆けずり回ってAを探すこともした。 本来一定期間以上の無断欠勤はクビなんだけど、社長が絶対何かあるはずだからと長期休職扱いにした。 翌月にAは遺体で見つかった。 どうなってたかは分からない。ただ亡くなった事が確認されたとだけ聞いた。 上司からは、お母さんにお会いしたが一見まともだったがちょっとおかしかった、と言われた。 あまりにショックで、みんな絶句していたし、何も言われなくとも自殺だと思った。 私は最後にAに会った時のことを思い出した。 「聞こえますか?」 とどんな気持ちで聞いたんだろうか。 もしかしたらあの瞬間、Aは正気に戻って、自分がお母さんと同じ状態になってることに気づいたんじゃないだろうかと思う。 上司にその事を話したけれど、「病気だろ?ガンで死ぬのと同じようなもんだよ。それより新しい人とらなきゃなあ」と言われたけど、 上司は一切目を合わせなかったし、考え込んでいた。 どうにも出来なかったし、多分今誰かに相談したところで答えはないんだよね。 寛解と憎悪を繰り返す病気のようだから、薬を飲めば幻聴からは開放されたかもしれない。 こうやって書くと精神的におかしくなった後輩が亡くなったという1行ですむ話だけど、その過程があまりに辛かった。