転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1561550451/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/26(水) 21:00:51.77 ID:F2H4nCm2O その日、空に浮かんだ暗雲から雨粒が舞い降りたのは、昼休みが終わってからだった。 SOS団の無益な活動を終える頃には、いよいよ本降りとなっており、帰宅するべく昇降口から一歩踏み出すのは、傘を忘れた俺からすると、なかなか勇気の要る悪天候である。 「ん」 そんな俺に向けて、涼宮ハルヒが口をへの字に結んだまま、傘の先端部を突きつけてきた。 いったい、なんのつもりだろう。 「傘、忘れたんでしょ?」 「あ、ああ……」 「特別に、貸してあげる」 それはどうもご親切に、とはいくまい。 「お前はどうするんだ?」 そう尋ねると、ハルヒは何言ってんだこいつ、みたいな眼差しと共に、嘆息をひとつ吐いて。 「見ればわかる通り、傘は1本しかないんだから、あんたと一緒に帰るに決まってるでしょ」 ああ、なるほど。 それは道理だろう。 しかし、すると、まさか。 ひょっとして、それは相合傘という奴では。 「なによ」 「……いや、なんでもないさ」 今にも俺を置き去りにして立ち去りそうなハルヒに懸案事項を告げるのを諦めて、俺はいかにも女子の持ち物とわかる黄色い傘を、広げた。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/26(水) 21:04:17.66 ID:F2H4nCm2O ところで、傘というのは本来1人で使用するものであり、ビーチパラソルなどの特殊な用途に使われるものを除けば、そこまで大きくはない。 よって、現在、俺の左肩はびしょ濡れだった。 「肩、濡れてるわよ」 「仕方ないだろ」 「もう少し、こっちに寄ったら?」 肩が濡れるのは仕方ないことだと割り切っている俺に対して、ハルヒは解決策を提示した。 しかしながらそれには新たな問題が発生する。 端的に言って、肩と肩が触れ合う危険性だ。 「仕方ないじゃないの」 そんな俺の危惧を、またもハルヒは仕方ないと切り捨てて、向こうからこちらに寄ってきた。 重ねて言うが、断じてこちらから寄ってない。 あとで裁判沙汰にでもなったら面倒だからな。 「あんたを訴えたところで、たいした損害賠償を請求出来るとは思えないから勘弁してあげる」 当たり前だ。 俺は学生で、被扶養者だ。 請求はお袋に回してくれ。 「とはいえ、責任能力がないからと言って、あんたの責任がなくなるわけじゃないわ」 「どういう意味だ?」 「金銭ではなく身体で支払いなさいってこと」 そう言って、おもむろに、尻を撫でてきた。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/26(水) 21:06:04.79 ID:F2H4nCm2O 「いきなり何すんだ!?」 「私の肩に触れた対価よ」 ギョッとして抗議すると、そう返された。 「お前の肩と、俺の尻は等価ってことか?」 「ええ、むしろまだまだ債務は残ってるわ」 言わせておけば、お高くとまりやがって。 少し美人だからって自惚れるのも大概にしろ。 こうなったら、こっちもハルヒの尻を。 「いいわよ。その覚悟があるのなら、ね?」 念を押すように、覚悟を問われて、断念する。 「まだ何か言いたいことある?」 「いい加減、尻から手を離してくれ」 「まだ債務が残っているって言ったでしょ?」 その債務とやらは、あとどれくらいで支払い終えることが出来るのか、それが気になるね。 「私が満足するまでに決まってるじゃない」 「いくらなんでも横暴だ!」 「うるさいわね。全ては団長権限よ」 いつからSOS団の団長は、人の尻を撫でる権限を得たのか。俺にもその権利を分けて欲しい。 「馬鹿。団員その1の分際で、何言ってんのよ」 そう言って団長は団員その1の尻を撫で回した。 続きを読む