転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1561125611/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/21(金) 23:00:11.43 ID:Y3uZfII6O 「ねぇ、西片」 「ん? 高木さん、どうかした?」 私の隣の席に座る西片くんはからかわれ上手。 そんなことは、わざわざ言うまでもない。 こちらの予想を上回る反応を、返してくれる。 「最近、蒸し暑いよね」 「なにせ梅雨だからね」 梅雨時ということもあり教室内の湿度が高い。 「でも、雨降りそうで降らないよね」 「そうだね」 窓の外を見ると、分厚い雲が広がっていて。 西片くんと一緒に眺めていたら。 ふと、彼をからかう発想が、頭に浮かんだ。 「今日、雨が降るかどうか賭けようか?」 ああ、今日もまた。 私の悪い癖が、出てしまった。 本当は、こんな意地悪してはいけないのに。 「その賭け、乗った!」 自信満々な西片くんは、いつも私を誑かす。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/21(金) 23:03:30.65 ID:Y3uZfII6O 「随分、自信があるみたいだね?」 「ふっふっふっ……今日の僕は一味違うよ!」 賭けを始める前から、勝ったみたいな表示。 鼻の穴が広がっていて、まるで子供みたい。 きっと、朝の天気予報を見てきたのだろう。 「そう言えば、西片」 「なんだい、高木さん」 「今日、傘持って来てないね」 「そりゃあ、降水確率が0%だったから……」 なるほど、今日の降水確率は0%なのか。 まんまと誘導尋問に引っかかって。 西片くんは早々にアドバンテージを失った。 「あっ!」 「それは良いことを聞いちゃったなぁ」 「ず、ずるいよ、高木さん!」 クスクス微笑むと、彼は拗ねた顔をした。 「ごめんごめん、フェアじゃなかったよね」 「今更謝られても、もう知られちゃったし」 「納得出来ないなら、私は降る方に賭けるよ」 西片くんのご機嫌を取り戻す為に。 私はあえて、降水確率に逆らうことにする。 とはいえ、初めから、そうするつもりだった。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/06/21(金) 23:07:13.58 ID:Y3uZfII6O 「ほんとにそれで良いのかい、高木さん?」 「うん、それで良いよ~」 念を押すように尋ねる、西片くんに対して。 まるで降参しましたとばかりに諦めた口調で。 不利な方に賭けた私を見て、彼は勝ち誇った。 「それじゃあ、結果は放課後に決めようか!」 「放課後までに雨が降ったら、私の勝ち」 「降らなかったら、僕の勝ちだ!」 放課後まで、あと半日ほど。 気の早い西片くんは、もう勝った気でいる。 そんな彼を見ていると胸が疼く。たまらない。 たまにわざとやっているのではないかと思う。 私を喜ばせる為に、そうしているのでは、と。 「あー! 早く放課後にならないかなぁ~!」 目を輝かせて、そう口にする彼を見ると。 そんな疑いは、無縁であるとわかる。 純粋な西片くんは、本当に可愛くて仕方ない。 そんな彼に、また意地悪なことを囁いた。 「私が負けたら、靴下をあげるね?」 「えっ?」 「西片が負けたら、靴下をちょうだい」 わけもわからず。 ポカンとした、表情。 その顔を見るたびに、私の全身が、熱くなる。 続きを読む