転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527865415/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/06/02(土) 00:03:35.35 ID:PmuEES8m0 その日の昼休み。 僕と鳴はいつも通り、屋上で昼食を済ませた。 屋上には僕ら以外に誰もいない。当然だ。 僕達が通う中学にまことしやかに伝わる現象を回避するべく、僕と鳴はいないものとして扱われているのだから。だから、2人ぽっち。 鳴「ご馳走様。美味しかったよ」 空っぽの弁当箱の蓋を閉めつつ、鳴はお礼を口にした。そして空の弁当を手渡そうとして、何やら躊躇している。 恒一「口に合ったなら良かったよ」 いつだか約束していた手料理を振る舞う約束。 それを果たし、賞賛を受けた僕は照れ臭さと嬉しさを誤魔化しつつ、弁当箱を受け取ろうとしたのだが、鳴はなかなかそれを渡そうとしない。 鳴「やっぱり、洗って返すね」 決心したような、有無を言わさぬ口調。 そういうところにはわりと無頓着かと思いきや、変なところで律儀さを発揮するようだ。 僕としては別にそのまま返してくれても構わないのだが、本人が決断した以上、それに対してとやかく言うのは無粋だろう。 恒一「わかった。それじゃあ、教室戻る?」 鳴「そうね……戻ろっか」 そろそろ昼休みが終わる。 授業前に教室に戻るのは当たり前だが、その当たり前が今の僕達には当て嵌らない。 いないものとして扱われている現状、クラスメイトにとっても僕らが戻らない方が都合がいいからだ。 そうすれば、いないふりをしなくて済むから。 鳴「ねえ、榊原くん」 恒一「ん?」 屋上から校舎の中に戻ろうとする僕のワイシャツの袖を摘み、引き止められた。 何事かと振り向くと鳴は片目を覆う眼帯をひと撫でして、脈絡なく、こんな提案をしてきた。 鳴「教室で脱糞してみる」 恒一「……は?」 ごごごごぉ……と、雷鳴が遠くで轟いた。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/06/02(土) 00:06:30.99 ID:PmuEES8m0 場面は変わって、教室内。 僕と鳴は午後の授業に少し遅れてやってきた。 もちろん、それに対するリアクションは皆無。 生徒はおろか、教師でさえ、反応を示さない。 いないものとは、こういうものだ。 教壇には副担任の三神先生が立っている。 LHRの最中だったらしく、久保寺先生も傍に控えている。話の内容は現象についてらしい。 どうやら有効な対処方法を検討している様子。 三神先生としては、複雑な立場なので、僕と鳴の現状を打破しようと必死なのだろう。 その気持ちは有り難いが、今の僕には何も出来ない。なにせ、発言権すらないのだから。 しかしながら、そこまで思い詰めてはいない。 以前、鳴が言っていた。 これで犠牲者が出ないならば、それでいい。 最近は、僕もそう考えられるようになった。 陰惨な事件が起きるよりは、断然いい。 鳴と2人っきりの世界は静かで居心地良かった。 だから、積極的に現状打破するつもりはない。 もちろん、正直に言えば和気藹々とクラスメイトと戯れたい気持ちは少なからず存在しているが、それで新たな犠牲者が出てしまっては本末転倒だろう。和気藹々となんて、不可能だ。 三神「他に、何か案のある人はいませんか?」 これと言った打開策が見つからぬままクラスメイトは口をつぐみ、教室内が静寂に包まれる。 そんな折、1人の女生徒が、手を挙げた。 鳴「はい、提案があります」 聞き覚えがあるその声に気づき、思わず振り返ると、逆光の影から白?めいた真っ白な手を天にかざした見崎鳴と、目があった。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/06/02(土) 00:06:47.71 ID:dS2m8MdOO anotherのss久しぶりだな 続きを読む