心が辛いときは空を見よう 我が家の新課題。注意障害持ちのお妻様に、セルフケアーー自分自身を注意し整える習慣を、どのように学んでもらえば良いか? 新たな課題を前に、「ある出来事」を思い出した僕は、思考が行き詰まってしまった。 話は僕自身が高次脳機能障害を抱えて日々パニックの発作に襲われていた時期に遡る。 それまでの能天気な人生でパニックらしいパニックを経験したことがなかった僕は、病後に初めて経験することとなったリアルなパニックに、多いに混乱し、悶絶した。 理由もないのにただ不安や怯えのような感情が心を満たして、辛くて仕方がない。まるで車の運転中に目の前に子どもが飛び出してきた瞬間の「ひゃっ!」と息をのんだ状態がずっとずっと続いているような、心が竦んだ緊張状態が延々続くのだ。 そして思い出したくない、考えたくないマイナスの思考を始めると、その思考を切り替えることもできない。耳の横で黒板を爪で引っ掻かれ続けて、そこから自力では逃げ出せないような、底なしの不快感……。 だがそんな状況でハアハアしている僕に、かつて自身もパニックを抱えていた経験者であるお妻様は、こんなアドバイスをしてくれたのだ。 「大ちゃん、心が辛いときは空を見ようよ。ほら、雲の形がどんどん変わっていくよ。観察観察!」 photo by iStock そういいながら、空を見て立ち止まり、ハアハアと呼吸の一回一回が溜息みたいになっちゃう僕の背中を、お妻様は淡々と撫で続けてくれた。 いずれもかつてお妻様自身がメンタルを病んでハードなリストカッターだったころに、「それで自分は楽になった」という経験から来たアドバイスとケアなのだが、確かにこの空を見ることと背中を撫でてもらうことは、僕の抱えたパニックの苦しさを、劇的ではないにせよ緩和してくれたように思う。 けれども、なぜそんなことで僕は楽になったのか。これはやはり、「注意」の解釈で理解がつくと思う。パニックに陥ったりマイナス思考の渦から抜け出せない状況とは、つまり自分の内側の思考に向かう注意が偏ってしまって、それをキャンセルできない=注意障害における「シングルフォーカス」と呼ばれる症状。 それに対し、お妻様の提案してくれた緩和策とは、この自分の内部に向かう注意を逆方向=自分の外側の世界にぐるっと方向転換させる行為だと考えられる。刻々と変わる雲の形を観察することも、自分の背中を撫でてくれる手の暖かさや刺激に集中することも、注意力の方向を外向きに逸らす効果があり、結果として僕は苦しさが緩和するように感じた。 そう。間違いなくこれは、過去に自分の内部の苦しさを直視したら壊れてしまうような時期を過ごしたお妻様が、自衛手段として生み出したメソッドだろう。 実際いまも、お妻様は具合が悪いときに限って滅茶滅茶ゲームに集中するし、やたらに猫を撫でまくり、しつこく猫語で会話を試みているし、普段から目の前のもの(特に生き物)を観察するのが好きで、長時間かけて信じられないようなディテールまで見ているところがある。 自分の世話はそっちのけでペットの世話や生き物の観察。居間の蔵書も鳥や昆虫なんかの図鑑でいっぱい。 自分の内側より外側の世界に意図的に注意を向けることに対して注意力が高を偏よらせることで、心のバランスをとってきたのだと思う。 via: 「発達障害」の大人が生み出した、ちょっと複雑なセルフケアの方法(鈴木 大介) | 現代ビジネス | 講談社(1/5) オススメ記事 心が病んでいる状態とはどのような状態か 様々な精神疾患がありますが、基本的に一つの方向性があります。それは、自分にだけ目が向いているという状態です。外界の様々なことに関心を持てなくなったり、逆に自分と紐付けてあらゆることを強く捉えすぎてしまってわけがわからなくなってしまう人もいます。 結局のところ、あまりにも強い自我に振り回されて自分で自分をコントロール出来なくなっている状態がシングルフォーカスと言われる状況なわけですね。私の知り合いに統合失調症の方がいるのですが、彼はこのような事をいつも言っています。 「私の電話などは全て盗聴されているんです。恐ろしいことなのですが、見ているテレビなども把握されている可能性が高い。電話で話した内容やテレビで見た内容を、次の日に職場の同僚(彼らもみんな私を攻撃しているのですが)がニヤニヤしながら話していたりするんです。お前の電話や行動は全て盗聴されているぞ、という脅しのようなものなんですね。調べてみるとアメリカのエシュロンというものを使うとインターネット上の全てのデータも把握されているそうです。怖くてネットなんか使えません」 ご理解頂けるでしょうか。昨日やっていたテレビ番組の話を次の日に話題にすることは何もおかしくありません。なのに彼は自分への脅しやあてつけとしてやっていると思いこんでいます。これは、強力な自己中心的感情です。自己を中心に捉えるため、あらゆる出来事を全て自分に紐付けてしまう。あらゆる偶然も自分に対して狙ってやっていると捉える。 普通に考えればすぐにわかると思うのですが、普通の一般人である彼の言動をわざわざアメリカの軍用情報通信技術を用いて把握しようとする人などいません。それほどの価値などありません。もっと重要人物というのが世界にはいくらでもいるわけですから。しかし彼の世界の中では彼は最重要人物ですから、こういうわけがわからないことも現実味を持って考えてしまう。まさにシングルフォーカスの状態だと言えるでしょう。 自殺もシングルフォーカス よく、自殺するような人間に「残された人間の気持ちを想像してほしい」という完全に的はずれなことを言う人がいますが、残された人の気持ちを考える余裕もなくなっているから自殺するんだという理解が必要です。自分のこと、自分が抱えている悲しみ、自分が抱えている痛みや傷のことで他のことなど到底考えられる状態ではなく。これからのことや外界の様々な出来事を全て無視してしまっているからこそ自殺を考えるのです。 何かに苦しんだり悲しんだりしているときは、自分の意識が自分にしか向いていないかどうかを確認してみるのが良いでしょう。もしも自分と親しい人のこと、自分が所属する組織のこと、自分が所有しているものなどに関心が向いていないことがわかったらお医者さんに行きましょう。