山中伸弥と羽生善治が話す将棋の将来から見えるイノベーションの正体

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日本を象徴する最も高度な頭脳を持った二人の対談の一部を読んで感じることは、まさに発明や創造とはワクワクする協働の中にあるということです。

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ノーベル賞科学者・山中伸弥氏と史上最強棋士・羽生善治氏が「10年後、100年後の世界」について語る「予言の書」が発売された。それが『人間の未来 AIの未来』だ。本書の中から「AIと将棋の未来」について書かれたパートを特別公開する。



なぜ将棋のソフトが急激に強くなっているのか
山中 人工知能(AI)の「AlphaGo」(アルファ碁)が世界トップクラスの囲碁棋士イ・セドルさん(韓国)に四勝一敗で圧勝したことが話題になりましたね。
羽生 はい、2016年3月のことでした。その年の2月、私がNHKの番組[NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」2016年5月放送]で人工知能を取材したとき、グーグルの傘下にあるイギリスのディープマインド社で、アルファ碁を開発したデミス・ハサビスさんにお会いしてお話を伺いました。囲碁は少なくとも十年は人間に追いつけないと言われていたので、大きな挑戦と思えました。おそらくイ・セドルさん自身も「負けるはずがない」と思っていたんではないでしょうか。
山中 それくらい、人工知能の強さは予想を超えていた。
羽生 そうですね。将棋ソフトも想像をはるかに超えるスピードで強くなっています。2017年4月、5月の電王戦では、将棋ソフト「PONANZA」(ポナンザ)が佐藤天彦名人に二戦二勝しました。
山中 ここ数年、将棋のソフトが急激に強くなっているのは何か理由があるんですか。

羽生 「ギットハブ」(GitHub)というサイトがあるんです。ギットハブはソフト開発プロジェクトのための共有ウェブサービスです。将棋ソフトはほとんどがギットハブに載っており、オープンソースなので、誰でも自由にそれを使って分析や研究ができるようになっています。
アクセスして「このプログラムのここはおかしいよ」とか「ここは直したほうがいいよ」とチェックできます。それも最新版をどんどん載せてくれます。すると、開発者はそれを見て「自分も将棋のプログラムを作ってみよう」と思う。棋士もアマ、プロを問わず「それを使って分析してみよう」となる。それで飛躍的にレベルが上がっているんです。
山中 そこはチェスや囲碁のソフトとは違うところですね。
羽生 それが可能だったのは、実は「将棋ソフトを売る」マーケットが十年くらい前になくなったからなんです。強すぎて誰も買わなくなりました。マーケットがないので利害関係がない。だったら、いっそのことオープンソースにして、みんなで自由にどんどん進化させようという流れになったんです。
年に一度の将棋ソフトの大きな大会が終わると、上位ソフトのいくつかがウェブ上に公開されて、翌年にはそれをベースにした新しいソフトが出てきます。その年の頂上にいたソフトが翌年には五合目くらいになっている、ということが繰り返されているので、本当に驚異的なスピードで進化しています。
山中 将棋の勝負ではなく、将棋ソフトの勝負をみんなでしている(笑)。
羽生 ええ。実は私自身、ソフトの世界で将棋はチェスから十年、十五年は遅れていると思っていたんです。チェスは世界での競技人口も多いし、論文の質と量もまさっていましたから。でも今はどういう状況かと言うと、将棋の世界で強いソフトは全部無料です。しかも、いくつもあるソフトを比較して使える共通のプラットフォームも開発されています。さらに使い方がわからない人のために、マニュアルを書いてくれている人もいます。どこまで親切なんだ、と思います。
一方でチェスの世界は、ソフトから何から全部揃えようとすると、けっこうお金がかかります。だから、チェスのソフトはそれほど多くの人が使っているわけではありません。そのため、ここ五年ほどで将棋のソフトが一気にチェスを追い越して、一番手軽で使いやすくなったんだと思います。
山中 そういうソフトを開発している人たちのモチベーションは、おそらく収益じゃないんですよね。
羽生 収益ではありません。第一、それを仕事ではやっていませんから。ただ私は、こういうことがあるんじゃないかなと思っているんです。今は結局、ビッグデータと言われるデータの力とか、あるいはハードウエアの計算リソースをどれくらい持っているかが、全体の性能や機能のかなりの部分を占めてしまっています。
すると、プログラマーからすれば、自分の腕の見せどころがないというか(笑)、相当比重が下がってしまいます。その意味で、将棋ソフトの場合は、そこでやりがいを感じることができるようなんです。
山中 そうなってくると、どちらかと言うと、もう趣味の世界ですね。
羽生 そうですね。それに、いろんなジャンルの人たちがいろいろアイデアを共有して進化しているところが、開発者たちは楽しいのではないかなと見ています。今まで画期的なプログラムを作った人は、もともと化学が専門とか法学が専門とかまったく違う世界にいるんです。そこで得た知識や経験値を置き換えてソフトを開発していく。そういう人たちが幅広く入ってきているところが大きいと思っています。
だから、将棋のソフトはデータとハードの力ではなくて、ソフトの力をブラッシュアップして強くしてきた側面があります。そういう意味では、「ガラパゴス的な進化」を遂げてきたと言っていいと思っています。
via: 山中伸弥さんが羽生善治永世七冠に聞いた「AIと将棋の未来」(山中 伸弥,羽生 善治) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
 
オープンイノベーション
非常に示唆的な内容を持った記事でした。私が一番面白いと感じた部分は将棋の発達がチェスなどと比べて早かったのが、ビジネスなど関係なくただ純粋に面白いと思った人たちが面白いからこそ改善を繰り返して、瞬く間に成長させていたことです。お金にならないから理大が発生せずに外が発生しないからこそ心の底から協力することができる。それは素晴らしいことです。
 
そう思うのと同時にであるならば素晴らしいアイデアというのはそう簡単に生み出せないということも分かります。ビジネスになるような素晴らしいアイディアというものはなかなか人と一緒に作り出すことができない。どうしても特許や知的財産権といった問題が絡んできてしまうからですよね。オープンイノベーションという言葉がありますが最も難しいのはこのような権利関係の部分です。
 
ほんとはみんな楽しく仲良く面白いことをやろうとしていけばいいのですがなかなかそうもいきません。羽生さんが言ってる通り今回の将棋の話も全て本業じゃないたちがやっていたようですし私の趣味として楽しくやっているからこそできているわけですよね。
 
本業以外の時間を持てれば
そんなふうに考えてみると Google などの会社が本業とは別に自由に趣味の時間として労働時間のうちの20%使ってくれというような制度というのは非常に面白いものですね。結局そのような生き方というのが一番クリエイティブだということです。ただし想像にかたくありませんが、Google はもう十分な利益を出している会社でありそのようなクリエイティビティが新しいビジネスモデルを作るためにも非常に価値があるからこそ許されてる部分があるわけですよね。
 
企業としての余裕もなく労働者としての余裕もなく、何か新しいことにチャレンジするパワーもなければそれだけの時間もない。あらゆるクリエイティビティはそのような形で失われてしまう。この将棋の話も、そういう余裕を持った人間がたくさんいたから進んだ話。そういう余裕を失ってどんどん息苦しくなっているのが最近の日本だなと本当に思います。働き方改革がこれを壊すことが出来るのかどうか、わかりませんがもしそう出来たら素晴らしいことだと思います。
 
副業がオーケーになっていく中で、ただそれが制度的に可能になると言うだけでは意味はありません。本業での労働時間がもっと減って、過労死なんて当然発生しないような働き方が成し遂げられなくてはならないのです。表層的な部分だけが変わるのではないことを強く祈ります。

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