非正規雇用、派遣切り、ホームレス…転がり落ちていく人生は誰のせいか

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転がり落ちていく貧困への道、一体誰が抗う事ができるというのか。そしてこんな社会を作ってしまったのは誰なのか。普通に生きることが如何に難しいかを教えてくれるインタビューです。

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そして埼玉・上尾にある大手自動車メーカーの工場で派遣社員として働いているときにリーマンショックに遭った。大部屋にキイチさんら派遣社員100人ほどが集められ、雇い止めと退寮の通告を受けた。重苦しい空気の中、誰一人として質問や抗議の声を上げることはなく、失業保険の申請方法の説明に無表情で聞き入る同僚たちの姿を、今もよく覚えているという。
「テレビで『派遣切り』のニュースを見ていたので、不安に思っていました。ショックでした。何年も正社員と同じように働いたのに、おかしいなとも思いました。けど、どうにもならない。1人ではどうにもできないじゃないですか」
50社以上立て続けに不採用
寮を追い出されたのは冬の最中。カビだらけの服は捨て、残ったありったけのシャツやセーター、コートを着込み、駅前や公園で1カ月ほどホームレス生活を送った。その後、雇用促進住宅に入居。ハローワークに通い、紹介された会社の採用面接を受けたが、不採用が続いた。次第に気分が滅入り、「酒に逃げるようになってしまった」という。50社以上立て続けに落ち、1晩で焼酎2リットルを空けるようになった頃、ハローワークの相談員から医療機関を受診するよう勧められた。うつ病と診断された。
運送会社や派遣会社による理不尽な仕打ちの数々に、さぞ怒っているものと思いきや、キイチさんは意外にも穏やかな表情でこれまでの働き方をこう振り返る。
「トラック運転手の仕事は面白かったです。いったん出発してしまえば、車内で好きな音楽を聴くこともできましたし。どんな曲を聴いていたかですか? 私の世代のアイドル、明菜やキョンキョンですよ。派遣は立ち仕事のうえ、3交代で夜勤もあったので腰はつらかったですが、好きな車にかかわれる仕事でしたから。できるならもう一度工場で働きたいと思っています」
via: 正社員になれなかった56歳男性の厳しい貧困 | ボクらは「貧困強制社会」を生きている | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 
なぜ転がり落ちてしまうのか
この猛スピードの人生の転がり方には、もはや背筋が震えるものがあります。そして物凄いリアリティがある。もしも自分がここにいたら、同じような道を進んでしまうような気がするのです。個人の資質や能力の問題ではなく、もっと大きな枠組みのせいで生じてしまっている不幸であるように見えて仕方ありません。
 
いまだって大卒の非正規雇用の割合は実に4割にも登ります。非正規雇用として働き始めると、雇い止めが来たら終わりです。その雇用の中で何かスキルを得られたら良いですが、そうである可能性は決して高くない。というかそもそもほとんどのサラリーマンはいまいる会社を出た時に持っているスキルなんて大してない。会社名が転職では大事。
 
とにかく、こういう風になってしまうのは個人の問題ではない。だから貧困を個人の自己責任に落とし込んで議論するのはもう終わりにするべきです。問題は、こういう人が生まれないようにどんな制度にしたら良いのかということを真剣に考えることです。
 
政府、企業、市民
政治学の世界ではよく3つのアクターが用いられて社会を説明します。一つ目は政府、官公庁です。いわゆるお硬いところ。二つ目は企業、あらゆる営利企業です。お金を稼ぐことを目的としています。そして三つ目が市民。いわゆる普通に生きている人達です。
 
当然ながらこれらは全てこの貧困を生み出すシステムと関わっています。直接雇用するのはほとんど企業です。彼らは出来るだけ安く労働力を活用して利益を上げようとします。政府はその雇用について法律などを作って規制を行います。例えば最低賃金はいい例でしょう。そして市民はそこで働くことはもちろん、団体を作って抗議することも可能です。NPOなんかが典型例ですね。
 
さて、このような状況で動けるのは誰でしょうか。市民が声を上げるのが良い、それは間違いないでしょう。でも現実問題これだけ長期労働が問題になり、また非正規雇用で不安定な仕事をしている人達が、政治的な活動をする余裕を持つことは出来るでしょうか。私は不可能だと思います。それは無理です。
 
政府は統計データを持っているのですから、こういう窮状を理解して彼らを支援するような仕組みを考える必要があります。企業は利益追求が目的ですから、彼らをその制度設計に加える必要はありません。とにかく、国家は何のためにあるか。それは国民が安全に、安心して暮らせる社会を作ることです。
 
いまの政府は明らかにその怠慢が起きている。アベノミクスで好景気が続いていても、格差は拡大している。お金持ちだけが幸せになるのではなく、貧しい人、しかもそれは自己責任ではない社会的な被害者に対してのアクションがないなら国家としての価値などない。私はそう考えます。

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