「スーパー戦隊」はなぜ赤がリーダー? 特撮ヒーロー

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画像提供:マイナビニュース マイナビニュース ●ヒーローに赤が多い理由
1975年に放送を開始した『秘密戦隊ゴレンジャー』を第1作とし、現在好評放送中の『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年)まで41作、42年もの長きにわたって子どもたちに愛され続けている東映制作の長寿テレビシリーズ、それが「スーパー戦隊」シリーズです。5色に彩られたカラフルなヒーローが、それぞれの長所や得意技を生かしつつ、共に力を合わせることで巨大な悪をやっつけるという「グループヒーロー」のコンセプトは、子どもたちに「共に助け合う"友情"」や「協力して大きな目標を達成する"団結"の心」を教える役割を果たしてくれました。

そんな「スーパー戦隊」、ひいては特撮ヒーローが登場する作品において、読者の方々から"色"にまつわる質問がマイナビニュースに寄せられました。今回はその問いについて、特撮ライターの秋田英夫さんが独自の調査・分析を行い、回答してくれました。

○「ヒーローもので赤がなぜリーダーなの? 男の子の番組だから青とかじゃないの?」

こちらの質問に関しては、まずいくつかのあやふやな部分を整理し、見解を統一しておく必要があります。「リーダー」という言葉が出てくるということは、1人で悪と戦うヒーローではなく、基本、複数人のヒーローが力を合わせて戦うグループヒーロー作品に限ってという意味ですね。また、「赤」や「青」という「色分け」でヒーローを分類するのは「スーパー戦隊」シリーズ特有の事例であり、現在放送中の『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)に登場するエグゼイド、ブレイブ、スナイプ、ゲンムなどのライダーに見られるように、「何色のヒーロー」とひと言で言い表せないカラフルなヒーローも多いのです。よって、ここで取り上げる「ヒーローもの」とは、すなわち「ボディカラーで個体を区別している、グループヒーローが活躍する作品」であると限定させていただきます。

その上で先の質問にご回答しますと、「必ずしも赤がリーダーではない」と断言できます。ブルービート、ジースタッグ、レッドルの"メタルヒーロー"作品『重甲ビーファイター』(1995年)では青戦士のブルービートがリーダーシップをとっていましたし、東宝の『超星艦隊セイザーX』(2005年)では、ライオセイザー(黄)がイーグルセイザー(赤)、ビートルセイザー(青)をまとめる中心的ヒーローとして活躍しています。円谷プロ制作の等身大ヒーロー作品『トリプルファイター』(1972年)では、長男のグリーンファイターが弟のレッドファイター、妹のオレンジファイターを束ねていました。実は、赤(レッド)が常に中心的ヒーローとしてグループのセンターに位置しているという印象は、東映の「スーパー戦隊」シリーズが作り上げたものなのです。

○「(ヒーローのボディカラーが)赤になったのはいつから? そしてそれはなぜ? 以降もなぜそれが踏襲されたの?」

古くは鉄腕アトムのブーツや、まぼろし探偵の帽子、仮面ライダーのマフラーや目など、正義のヒーローのコスチュームを構成するワンポイントとして「赤」い色は欠かせないものでした。日本の国旗「日の丸」の色である赤は、熱血の色、情熱の色でもあり、子どもたちの目をひきつける「強さ」を備えた色として、ヒーローのカラーにふさわしかったのです。誕生から50年以上経ってなお、幅広い年代層に愛される巨大ヒーローの雄『ウルトラマン』(1966年)もシルバーのボディに赤い模様が強いアクセントになっていましたし、『ウルトラセブン』(1967年)に至っては胸から下のほぼ全身が赤い、戦闘的なスタイルでした。

『人造人間キカイダー』(1972年)を例に出すまでもなく、60年代~70年代前半までのヒーローは主に1人で戦い、時には助っ人ヒーローを伴って2人で戦う程度でした。それゆえ、単独ヒーローのカラーも赤、青、黄などの原色を派手に用いたカラフルさを打ち出していました。しかし1975年から始まった『秘密戦隊ゴレンジャー』では、企画段階から5人のグループヒーローであることが最大のセールスポイントでしたから、はっきり赤、青、黄、桃、緑とそれぞれでひとつのボディカラーを受け持ち、5人そろったとき初めてカラフルな色どりとして見栄えがするような工夫がなされたのです。すなわち、ヒーローの「色分け」は『ゴレンジャー』から始まったと断言してもよいでしょう。

そして、センターには子どもの目をもっともひきつける力強さを持った「赤(レッド)」が必ず立つ、という"伝統"を築き上げたのも『ゴレンジャー』から連なる「スーパー戦隊」シリーズだったのです。

色分けされたキャラクター集団の中で「赤」がセンターに位置するという事例だけでいえば、東宝映画『地球防衛軍』(1957年)に登場した「怪遊星人ミステリアン統領」が先駆けとなります。ミステリアンは色で階級が決まっていて、幹部は黄色、技師・工員は青のマスクとマントを着けていますが、赤いマスクとマントは統領ただ一人。ミステリアンはヒーローではありませんが、後年に続々登場する仮面のヒーローキャラクターに共通する超未来的感覚がマスクやコスチューム、小道具などに表れているので、あえて特筆してみました。

「スーパー戦隊」以外のグループヒーロー作品、たとえば『アクマイザー3』(1975年)や『ブルースワット』(1994年)などではことさら「センターに赤」ということにこだわってはいませんし、『忍者キャプター』(1976年)や『超神ビビューン』(1976年)のように、「スーパー戦隊」を踏襲して赤い戦士をセンターに迎えることもありますが、基本的な「センターに赤」というイメージは、やはり「スーパー戦隊」シリーズが作り上げたと言えます。

●赤以外のリーダーは? キャラは色で決まる?

○「『スーパー戦隊』で赤以外がリーダーだったことはあるの?」

およそ1年に1作のペースで作品が切り替わる「スーパー戦隊」シリーズですが、あまり突っ込んでテレビを観ていない方には「戦隊って、毎年同じようなヒーローが出てきて、同じような内容のお話なんじゃないの」と思われる向きがあります。しかしそれは大きな誤解です。「スーパー戦隊」の特徴としては、すべての作品に「色分けされた変身ヒーローがチームを組んで悪の軍団と戦う」というフォーマットが敷かれているのは確かですが、共通しているのはその部分だけで、世界観や基本設定などは、作品ごとに驚くほどバラエティに富んでいるのが現実です。

それこそ、1億年前の恐竜時代の戦士『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)から、西暦3000年の未来世界から現代に現れた戦士『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)まで、戦隊ヒーローの出自はそれぞれがかけ離れています。さらには『星獣戦隊ギンガマン』(1998年)では古来から数えて133代目にあたる若者たちがギンガマンを名乗りますし、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)では忍者学校の落ちこぼれ生徒が「伝説の後継者」に選ばれることで、久しく途絶えていたハリケンジャーを復活させる形となりました。かように各作品の世界観が異なるわけですから、グループヒーローのキャラクター分類も、単純なものではありません。スーパー戦隊の中心人物は常に赤(レッド)だと先に述べましたが、それは物語の主役だということであって、必ずしもリーダーシップをとっているわけではないのです。

『科学戦隊ダイナマン』(1983年)のダイナレッドや『超電子バイオマン』(1984年)のレッドワンは、他のメンバーよりも年上なこともあって、チームを束ねるリーダーシップを自然に発揮していました。しかし『超獣戦隊ライブマン』(1988年)のレッドファルコンは、リーダーでありながら少々おっちょこちょいなところがあり、それまでの真面目一筋のレッド戦士像から飛躍した印象を持たせました。メンバー全員に主役級のウエイトを持たせて熱いドラマを展開した『五星戦隊ダイレンジャー』(1993年)では、メンバー全員が同格という珍しいキャラクターシフトが組まれ、道士・嘉挧が暴走しがちな5人の手綱を引っ張る役割を果たしていました。

『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年)では、忍者としての使命感が強い鶴姫=ニンジャホワイトが他の4人をまとめるリーダーとなり、ニンジャレッドは鶴姫を補佐するよき兄貴分として、戦闘面で仲間を引っ張る存在でした。5人全員が高校生という『電磁戦隊メガレンジャー』(1997年)では、メガレッドは無鉄砲で単純、しかしチーム内のムードを高める熱血野郎として描かれていて、チームをまとめる役割は成績優秀で理論家のメガブラックが務めていました。

シリーズ内にいくつか見られた「兄弟戦隊」の中でも、『地球戦隊ファイブマン』(1990年)のファイブレッドは長男として弟、妹をまとめていましたが、『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)のマジレッドは兄弟の中でもっとも可能性を秘めた末っ子という設定で、長男であるマジグリーンが後方支援を行い、絶妙なるチームワークを誇っていました。

このように、ヒーローの色と役割、性格設定などは1作ごとに大胆なほど大きく変化させるのが「スーパー戦隊」の特色です。その上で、赤(レッド)戦士が物語の中心で、常にセンターポジションをキープ(ファイブマンやダイレンジャーのように、エピソードによっては名乗りの際にレッド以外の戦士がセンターに来るという例外も多数あり)するといった統一感、様式美を備えているところも重要です。

○「色によってキャラクターの傾向はあるの?」

結論から言うと「ありません」。もともと、スーパー戦隊というのはシリーズごとに、基本5色のカラーを備えた変身ヒーローたちがチームワークで戦う、という基礎の部分はほぼ共通しており、ときおり『ジャッカー電撃隊』(1977年)の4人、『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)で3人、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年)で9人(スタート時)と、メンバーの数に差があったりする程度で、複数のヒーローが集合して悪と戦うという根っこの部分は変えていません。

それだけに、設定やストーリーがワンパターン、マンネリになったりしないよう、メンバー各人の性格設定や戦い方などは、一作ごとに大きく変化させているのです。

例えば、「スーパー戦隊」シリーズをほとんど観たことがないという人でも知っているくらい、有名なキャラクター設定に「キレンジャーはカレー好き」というものがあります。『秘密戦隊ゴレンジャー』の力自慢・キレンジャー=大岩大太は本当にカレーが大好きで、第1話でゴレンジャー秘密基地(ゴレンジャールーム)への連絡口として使っているスナック「ゴン」に大岩が来店した早々、「カレーライス大盛りで4枚!」と大声で注文をしています。

他には、黒十字軍の青銅仮面が部屋に置いてあった大盛りカレーを食べるため、わざわざ強化服を脱いでから座り込んで食べようとしたり、同じく黒十字軍が準備していた睡眠薬入りカレーをウッカリ食べて、敵の侵入を許すという失態を演じたり、さらにはスナック「ゴン」がフルーツパーラーとして再出発を図った後でも、マスターに頼んでメニューにないカレーライスを作ってもらったりと、まったくもって大岩のカレーに対する執着心には恐れ入ってしまうしかありません。

しかし、以後の「スーパー戦隊」における黄色メンバーが、みんながみんなカレー好きというわけではありません。スナック「サファリ」をたまり場としている『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)のバルパンサーこと豹朝夫が、嵐山長官(太陽戦隊の長官だが、スナック『サファリ』のマスターを兼任)が50種類のスパイスを利かせて3日間も煮込んだ特製カレーをしょっちゅう食べているくらいです。

あとは『大戦隊ゴーグルV』(1982年)のゴーグルイエローや『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)のイエローオウルが大食い自慢ですけれど、キレンジャーのキャラ(大食いでコミカル)を受け継いでいるのは彼らくらいであって、ほとんどのイエロー戦士は陽気さこそ持ち合わせているものの、みなそろってスマートなヒーローとなっています。

その上で、『電子戦隊デンジマン』(1980年)のデンジイエローのような学究肌の青年だったり、『五星戦隊ダイレンジャー』(1993年)のキリンレンジャーのようなキザなシティボーイだったり、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)のハリケンイエローのような「癒やし系」好青年だったりと、作品ごとの時代背景をも反映してさまざまにチーム内での役割が異なっています。

シリーズ第8作となる『超電子バイオマン』(1984年)のイエローフォー以降は、ピンクと並ぶ「女性戦士」の代表的なカラーとしても、イエローが採用されることになりました。『バイオマン』ではアクティブなイエローフォー、優しさに満ちたピンクファイブ、そして『超新星フラッシュマン』(1986年)ではクールさと情熱をあわせ持つイエローフラッシュ、優れた身体能力と子どものような純情さを備えるピンクフラッシュというように、女性戦士が2人になったことによって戦隊内のキャラクター描写がそれまで以上に深くなるという効果を生んだのです。

本記事ではイエロー戦士をピックアップして説明しましたが、もちろん他の色の戦士も作品ごとにさまざまなキャラクター設定が備わっていて、誰一人として被ることはありません。「カラーで分けられた変身ヒーローがそれぞれの特性を生かし、チームワークで巨大な悪に戦う」という要素のみが共通していて、その他の部分(ヒーロー、悪の設定や巨大メカ、巨大戦士の入手方法など)は意識的に大胆なほど大きく変化させている……これこそが、「スーパー戦隊」シリーズが40年以上も長く続いている理由の一つなのです。

日本におけるグループヒーローの代名詞というべき「スーパー戦隊」シリーズですが、1993年にはアメリカのサバン社が東映と提携し、アメリカ版「スーパー戦隊」というべき『パワーレンジャー』シリーズを製作し、全米で大ヒットを飛ばしました。第1弾『マイティー・モーフィン・パワーレンジャー』は東映の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年/シリーズ第16作)をベースに、変身後のキャラクターアクションや巨大ロボット(大獣神)の戦闘シーンをそのまま流用し、変身前の役者が出てくる部分をアメリカ側で新規に撮影したものを組み合わせ、独自のストーリーを作り上げています。

当初は、『ジュウレンジャー』のヒーローキャラクターを引き継いだまま、シーズン2、シーズン3と作られていましたが、『超力戦隊オーレンジャー』(1995年)のリメイク版となる『パワーレンジャー・ジオ』(1996年)からは、日本の「スーパー戦隊」シリーズに合わせて1作品ごとにヒーローキャラクターのデザインをチェンジするようになりました。

1993年に始まった『パワーレンジャー』も2017年で23年、19作品を数える長寿シリーズとなり、3月には『POWER RANGERS』と題した最新劇場版(シリーズとしては通算3作目)がアメリカで公開。日本では、いよいよ7月15日から公開が始まります。

秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載
(秋田英夫)

(出典 news.nicovideo.jp)


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