王者から、狙って打った一発だった。 大阪大会1回戦。大阪桐蔭に13点をリードされて迎えた四回1死、カウントは2ボール。大手前の4番捕手、二ノ丸に迷いはなかった。「ここは思い切り振り抜いて、ホームランを狙おう」。試合で本塁打を狙うのは、初めて。でも、点差が点差だけに「雰囲気を変えたい。そうすれば、まだいける」。 大阪桐蔭の横川が投じたど真ん中の直球を、思い通りに振り抜いた。左翼へ舞い上がる打球。「打った瞬間、いったと思った」。左翼手が1、2歩動いただけですぐに追うのをあきらめた。高校通算8本目のホームラン。横川が対外試合で初めて浴びた一発となった。 待ちに待った大阪桐蔭との対戦だった。 3つ上の兄、裕貴さんにあこがれて、府内有数の進学校である大手前に入学した。受験前からの目標が「私学に勝つこと」。6月20日の組み合わせ抽選会でも、大阪桐蔭の隣が空いているのを見て、「やるなら強い方がいい。あそこに入ればいいな」と狙って引き当てた。 マスク越しに感じる桐蔭打線の圧力はすごかった。「どこに投げても打たれる。これまで対戦したことがないほど、鋭い振りだった」。1―13。完敗には「不完全燃焼」と言いつつ、「大阪桐蔭から狙って打てた本塁打は、最高の気分です」とすっきりした表情を見せた。 目標がある。「大阪大学に進んで、将来は総合商社で海外に日本の技術を売る仕事をしたい」。野球が終わってから本気で勉強をしようと思っていたから、今の成績ではまだ足りない。「明日からすぐ切り替えられるか分かりませんけど、頑張ります」と苦笑い。打倒・私学の思いは、この日登板した2人の2年生投手に「来年は絶対に勝ってくれよ」とたくした。(山口史朗) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170713-00000071-asahi-spo 続きを読む