【その15】 812: お 03/02/24 00:14青函連絡船洞爺丸の謎 今から20数年前に、函館に蒸気機関車を撮影に行ったことがある。撮影を終えて市内の旅館に戻るタクシーの中で、運転手からひとつの怪談を聞かされた。 とある日の早朝、江差方面から函館市内へ向かって国道を流していると、七重浜のあたりで手を上げている娘がいたので車を止めた。「市内へ行って」というのでちょうどいいと思い車を走らせたが、市内へ入ったところでふと気がつくと、後部座席の娘は忽然と姿を消していたというのである。 この怪談はただこれだけである。何のひねりも特別なオチもない。しかもこの手の話は全国にごまんとある「乗客消失怪談」の類型だ。 ただこの怪談は私の人生の中で耳にした、それこそ数え切れないほどの怪談話の中で、唯一の本人体験談である。 実は我々が普段耳にする怪談話の99%以上が「だれか第三者から聞いた噂話」なのであり、ひどいのになると「妹が友人から聞いた」といった又聞きあったり、又聞きの又聞きであったりするものである。 それとこの怪談話の背景にはある巨大な出来事が関係しているのだが、私がそのことに気がついたのはずっと後になってからのことだった。 その巨大な出来事とは、1954年(昭和29年)に起こった、年配者にとっては決して忘れることのない「青函連絡線洞爺丸沈没事故」である。 洞爺丸は、太平洋戦争中の空襲で壊滅状態にあった青函連絡線を立て直しをはかるため、国鉄が1948年(昭和23年)に大雪丸、羊蹄丸、摩周丸と共に建造した連絡船で、全長113.2m、排水量3,800トン、乗客定員約1,100人 と鉄道の客車・貨車を搬送できる最新鋭船だった。 続きを読む