転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432481854/l50 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 00:37:44.96 ID:gts+G51j0 「お姉ちゃん…お姉ちゃん?」 call my name。誰かが呼ぶ声。 私を呼ぶ声で、私は目を覚ます。 「あぁ、咲…。お帰り」 「ただいま、お姉ちゃん」 「ごめんね、私…寝ちゃってたみたいで…」 「ううん、良いの。起こしちゃって、ごめんね?」 いつの間にか、私は帰宅後に眠ってしまっていたようだ。 冷たい床の感触が、私を現実へと引き戻す。……もう、こんな時間か。 「ご飯にする?お風呂にする?それとも…」 「ふふ。今日もありがとう、お姉ちゃん」 対局を終えてやや疲れた微笑みを返す咲を、私は精一杯の笑顔で迎える。 咲の上着を取ってやると、ハンガーにそれをシワなく掛け、吊す。 私は横目で咲を見た。咲はそれに気付くと、先ほどよりも和かな笑顔を私にくれた。 「咲、これ…何本?」 「三本だよ、お姉ちゃん」 私の問いは、左手に立っている指の本数を尋ねるもの。 正しい返答が帰ってきたことに安堵して、私は今日も咲に飛びついた。 「今日も…今日も、大丈夫だったみたいだね」 「うん…。ありがとう…」 暫くの抱擁の後、咲はゆっくりと私を押し退け、洗面所へ向かった。 昨日は、私。今日は、咲。そして明日は、多分私。 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 00:39:28.43 ID:gts+G51j0 「…さて、じゃあ…。今日は何を作ろうかな?」 「あー…。ごめん咲、今日は買い物行ってない…」 「……あー……。いや、でも!何かあるよ!二人分なら!」 冷蔵庫の中身を漁りながら二人分の献立を考える食事登板の咲。 その日の食事登板役が、二人の抱擁の時間を決めることになっていた。 今日はやや短い。やっぱり、疲れているのかな。 「……何か取ろうか?」 「……うーん、そうしようかな…。でも、明日は買い物、お願いね?」 「任せて。………さて、どこにしようか…」 幾つかの出前店のメニューを私は取ると、ソファーに腰掛ける。 咲は冷蔵庫の物色を止め、横に並ぶとメニューを覗き見る。 「ここなんてどう?」 「そうだね、ここは暫く取ってないね。ここにしようか」 「うん。咲はいつもの親子丼でしょ?私もそれで良いや。注文するね」 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/25(月) 00:41:19.66 ID:gts+G51j0 受話器を取り、注文。 電話を取ったのは何も知らないバイトの子のようだ。それで良い。その方が助かる。 以前出前を取った時は、咲の正体がバレて大変な目にあった。 咲と喋れて嬉しいのは分かるが、仕事をきちんとこなして欲しい。 ふぅ…。と、私は注文を終え受話器を元に戻し、再びソファーに戻った。 「あはは…。今日は、女将さんじゃなかったんだね」 「その方が助かる…」 「今度はお店で食べようよ。この前は、サイン断っちゃったし」 「あれは、咲の体調が…」 「でも…やれることはやっておきたいんだ。私が、壊れちゃう前に」 悲しい笑顔で、咲は笑う。 「…………」 私は少し前まで、それを黙って見ることしか出来なかった。 「じゃ、お姉ちゃん…。出前が来るまでの間…」 そう言うと、咲は私に近付き、縋り付いてきた。 甘えた声で、咲は言う。 「お姉ちゃん分の補給、ちょっとしても良いかな…?」 補給と言う名の、再びの抱擁。 続きを読む