980: 大人の名無しさん 2005/03/24(木) 02:29:52 ID:3w9M3OPw 俺は一歳違いの兄といつしか冷戦状態になって、 高校に入ってから全く口をきかなくなった。 そしてそのままの状態で二人遠くの大学へ。 お互いの住所も電話番号も知らないまま、 正月に実家で顔をあわせても、やはり会話もないまま。 そんな21歳の冬、突然の母からの電話で、兄の病気を知らされた。 癌。末期。もって一年。 それなのに俺は、バイトにかこつけて一度も見舞いに行かず、 無論電話をしたりもせず、必死に看病する母を支えたりもせず、 ただ漫然と暮らしていた。 そして初めて病院に足を踏み入れた時には、もう兄は危篤状態。 俺の前で目を開く事もなく、呆気なく兄は逝ってしまった。 それから十年がたち、俺は今外国に住んでいて、 子供こそいないが妻はおり、かなり幸せに暮らしている。 けれども時折ふと気付いてしまう。 俺はこんな場所で、こんな暮らしをしていていい人間ではない、と。 そう、俺はたった一人の兄が、本当に本当に苦しんでいる時にこれを見捨ててしまった、 まさしくクズのような人間だったのだ。 それを思い出して、呆然としてしまう。 俺は生涯、自分を許す事はないだろう。 この重荷を、死ぬまで抱え続けなければいけない。 それは分かっている、それを悲しんでいる。 ただ、せめて。 これ以上の重荷は抱えずに済むよう、 今俺の周りに居てくれている人達全てに、 誠実に向き合って生きて行こうと思っている。 それでも、俺は許されないだろうけれども。 続きを読む