転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1570950716/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/10/13(日) 16:11:56.96 ID:Bh2qsw+10 アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/10/13(日) 16:13:11.99 ID:Bh2qsw+10 あたしが男の子だったら…ううん、でもそれじゃきっとプロデューサーに会えなかったかな? 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/10/13(日) 16:16:20.56 ID:Bh2qsw+10 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 勤め人と学生と老人でできた雑踏、時刻は夕暮れ。 いつもよりずっと早い時間帯の退社は、臨時ミーティングという見えすいた方便が可能にしたものだ。まあ、そのお題目で呼びつけられたのは事実だし、モチベーション管理という意味では仕事の一環と言えなくもないーーもちろんそんな寂しいことを言うつもりはない。 家からも事務所からも大して遠いわけじゃないが、通常の行動範囲では来ることもない、そんな町の、安アパート。 錆び付いた集合ポストの横を通り、もうちょっとマシなところに住めるだろうにと思いながらチャイムを押して十数秒。ドアが開く気配はない。だが中に人がいるのは確かだ。何しろ俺は、彼女に呼ばれてここにきたのだから。 それに、正直予想はしていた。 何しろペナントレース終盤。 今日の勝敗如何でマジックが点るか否かの分水嶺だ。部屋の主は、ドアの外のことなど頭の片隅にもないだろう。もう長い付き合いだ、それくらいじゃ怒る気にもならない。 しかしいつまでもここで立ちん坊しているわけにもいかないので、もう一度チャイムを鳴らそうと伸ばした手を、一度きりの着信が止めた。文面はこうだ。 『あいてろら』 「…………」 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/10/13(日) 16:17:36.95 ID:Bh2qsw+10 まあ、意図は理解できた。 ついでにオモテのことなど頭の片隅にもないと踏んだ俺の思い過ごしも謝ろう。 しかし開けっ放しとは感心しない。未だオートロックもないアパート住まいでその不用心は流石に無防備がすぎる。きょうび一般の女の子だってそんなことしないだろうし。 ノブを引くと本当にドアが開く。ため息混じりに足を踏み入れる。と、 「あ、わ、ああああああああぁ!!!」 俺のか細い鼻息なんかかき消すような落胆の声が、間取りごと貫いてきた。笑う。思わず笑う。バレたら大変だからここで笑っていく。 咳払い一つ二つでようやく苦笑を消し、ヒールの代わりにグローブが突っ込まれた靴箱を尻目に上り込む。ほどなく再開した応援の声を辿るように薄暗い廊下を進む。 次第に強くなるジャンクフードの気配。 昼から食っていない腹に染みわたる匂い。 思わず唾を飲み込みながら本丸の戸を開ける。 5: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします 2019/10/13(日) 16:18:59.52 ID:Bh2qsw+10 「さぁーしまってこー! まだまだ7回! 勝負は最後までわからなぁぁぁい!! プロデューサーお仕事お疲れさまーっ!」 「応援のついでか」 まあまだマシか。攻撃中だったらそれすら混ぜてもらえなかったかもしれない。 「ついでなんかじゃないってー! あ、お出迎えできなかったのはゴメンね? さっきはちょーど一世一代の山、ば……」 その和室の真ん中に胡座で陣取るアイドル姫川友紀は、数分前の記憶に海よりも深い色の目をする。 「山場、だったから……」 結果は聞くまい。 その代わりに、水を差すのは承知の上だが、一言だけ小言。 「にしても、鍵の開けっ放しはやめなさい」 「えーだってみんな良い人だよ?」 「それはアパートの人の話だろうが」 もっとも、それだって簡単に信用して良いものではないとと俺は思うが、性善説がキャッツの法被着ているような人間には効果が薄い。 「いつもはちゃんと締めてるってー、プロデューサーがくるから、今日だけそうしてただけ! うん、ゴメンゴメン! それよりそれよりー」 まったく悪びれる様子もなく目はテレビに釘付けのまま、ちょいちょいと手招きしてくる。ちゃぶ台の上には汗をかいた缶ビールと茶色過多のつまみたち。そして友紀の隣にはねこっぴー柄の座布団。 お招きは嬉しいが、もうひとつ、気がかりが。 続きを読む