転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1568899842/ 1: ◆3jMo9iZPSE 2019/09/19(木) 22:30:42.55 ID:RSNyvt7K0 モバマスSSです。 2: ◆3jMo9iZPSE 2019/09/19(木) 22:31:41.14 ID:RSNyvt7K0 目を開くと、見覚えのあるようなないような天井があたしを見下ろしていた。 体を起こし、辺りを見回す。あたしの寝ているベッドがひとつと、小さな机がひとつ、それに化粧台が目に映る。 簡素で清潔な、少し気の利いたビジネスホテルのシングルルームみたいな部屋だ。 さて、ここはどこだろう? 靄のかかったような頭を働かせて、懸命に記憶をたぐる。 あたしは今日、事務所でお仕事の打ち合わせをした。打ち合わせのあとはレッスンがあった。それから、どうしたっけ? たしかそのあとは、予定は入っていなかったはずだ。 少し考えて思い出す。レッスンを終えて、シャワーを浴びて、着替えを済ませて、さて帰ろうかいと思ったところで、あたしは突然すさまじい眠気に襲われた。それは、床でもなんでもいいから、一瞬でも早く横たわって意識を手放したいと思うような強烈な眠気で、あたしは歩いて五分とかからない寮の自室に帰ることも諦めて、事務所で休んでいくことにしたのだった。 すると、ここは事務所の仮眠室だ。 窓に目を向けると、日は暮れかけていた。レッスンを終えたのはお昼過ぎかそこらだったから、ざっと四時間以上は寝ていたことになる。 仮眠室で爆睡してんじゃないよ、と自分に呆れ返りながらベッドを降りようとして、ふと違和感を覚える。 『そこ』に手を当ててみる。違和感は更に増した。ショートパンツの前を開けて、下着を引っ張り、中をのぞき込んでみる。 「ちんこやん」 3: ◆3jMo9iZPSE 2019/09/19(木) 22:32:55.16 ID:RSNyvt7K0 薄い茂みの奥で、かくれんぼのヘタクソな子供のようにじっと身を屈めているそれは、科学的用語で言うところの男性器に違いなかった。 頭をかかえて、大きくため息をつく。なにかの間違いなのは間違いないんだけど、なにをどう間違えてるんだ? これは。 改めてベッドから降りてみると、また別の違和感があった。靴が大きいように感じる。それに、視点が少し低いような気がした。 化粧台の前に立って鏡を見てみる。まず目につくのは髪だった。あたしは艶やかな黒髪になっていた。 それから顔立ちも変わっている。体つきも違う。 しばらく色んな角度から鏡に映して、自分の姿を観察する。 ぱっと見ではわからないけど、よく見ると、ちゃんとあたしの面影がある。どこかのアニメ映画のように知らない男の子と中身が入れ替わっているというわけではない。 これはあたしだ。あたしが『男になっている』。それからもうひとつ、『若返っている』。 おそらくこれは、もしもあたしが男に生まれて、中学生ぐらいまですくすくと育ったらこんな感じ、という姿だ。 胸に手を当てると、ぺこんとブラジャーが潰れた。この姿でこれはないな、とTシャツを半脱ぎし、ブラを外してバッグに放り込んだ。 4: ◆3jMo9iZPSE 2019/09/19(木) 22:34:50.94 ID:RSNyvt7K0 状況の異様さのわりに、あたしは落ち着いていたと思う。 というのも、この事態を引き起こしたであろう人物に心当たりがあったからだ。こんなことをしようと思うような人間も、こんなことができそうな人間も、あたしはひとりしか知らない。まず間違いなく、志希ちゃんの仕業だ。 変な注射を打たれたとか、怪しい薬品を嗅がされたみたいな記憶はない。すると経口摂取か。事務所にあったもので、あたしが飲み食いしたもの――心当たりが多すぎる。 この事務所は日頃から「勝手にお食べ」みたいな感じに置かれている食物がたらふくあったし、あたしは他の誰よりも勝手にたらふく食べていた。あたしに一服盛ろうと思ったら、こんなに簡単なことはないだろう。 ともあれ、犯人が志希ちゃんなら、元に戻る手段を用意していないということはない。その点については信用している。 それにしても、我ながら美少年だ。こんな女の園でウロウロしてたら食われてしまうかもしれない。人と出くわさないうちに、さっさと事務所から脱出しよう。 ――なんて考えてたそばから、視界の隅でドアノブがガチャリと回転するのが見えた。 マズい、と思いつつも、隠れるヒマなんぞあるわけもなく、ゆっくりとドアが開かれる。 続きを読む