転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1568026427/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/09/09(月) 19:53:48.21 ID:W6D0RAKy0 こんなことを言うのは少し恥ずかしいが、プロデューサーとしての俺の毎日は充実している。 アイドル達との関係は良好だし、時々仕事につまずくことはあってもちひろさんや周りの人達の手を借りつつなんとかこなしていけている。 やりがいに満ちているというか、はっきり言って仕事が楽しくて仕方ない。 何人かには「働きすぎです」とか「もっと休んでください」と注意されているけれど、仕事が息抜きになっているのだから仕方ない。 だから、毎朝事務所に行くのだって喜びこそすれ、嫌がる理由なんてない。 はずなのに。 「…………」 どうして俺は、事務所とは反対方向の電車に乗っているのだろうか。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/09/09(月) 19:56:11.69 ID:W6D0RAKy0 異常は今朝、目が覚めた時からだった。 事務所に行きたくない。 そんな気持ちが胸いっぱいにあって、締め付けられるようだった。 嫌なことがあるからとか、他にしたいことあるからとか、そんな理由は皆無なのに。 むしろ今日は来月やるイベントの打ち合わせや他にも進めている企画の進行を確認したりと、やることはいっぱいあって、どれも昨日までは楽しみにしていたのに。 心か体か、ともかく何かが全身で仕事に行きたくないと拒否している。 まるで学校に行きたくないと駄々をこねる子供みたいに。 それでも俺は子供じゃないのだから、行きたくなくても行かなくてはいけない。 理由がないのならなおさらだ。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/09/09(月) 19:56:53.19 ID:W6D0RAKy0 いつも通りに準備をして、いつもより遅い足取りで駅へ向かったら、いつも乗る電車がギリギリ発車するところだったので慌てて。 「…………」 でも足は動かなくて、そのままドアが閉まるのを眺めていた。 わからない、どうしてしまったんだ俺は。 どこか体の調子がおかしいのかもしれない。 今日はもう仕事を休んで病院へ行くべきじゃないのか。 ああ、ダメだ。まるでこれじゃあ仕事を休むために今理由を作っているみたいだ。 情けなさに涙が出そうになる。 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/09/09(月) 19:58:21.32 ID:W6D0RAKy0 いったん深呼吸をして、気持ちを整える。 何故か今日はおかしいけれど、それも事務所につけば治るはずだ。 だから次の電車に乗ろう。 そう決めてホームで待っていたら、すぐに電車はきた。 ただし来たのは、並んでいる列の反対側、事務所とは反対方向の電車だ。 行き先には名前しか知らない駅名が表示されている。 都市部から離れる方向なので車両内はまばらに人が座っている程度だ。 5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/09/09(月) 19:59:24.14 ID:W6D0RAKy0 「……はっ」 自嘲気味な笑いが出てしまう。 たしかに次の電車に乗ると決めたけれど、ここであの反対方向の電車に乗ったら、それこそお笑いじゃないか。 事務所の彼女たちならこういうのもネタになるのだろうけども。 俺が同じことをしたところで馬鹿馬鹿しいだけだ。 ドアが閉まり、電車は動き出す。 「本当に、何をしてるんだ俺は」 次第に離れていくホームを眺めながら、俺はどこか安堵している自分が嫌になった。 続きを読む