まどか「魔法少女、冬にて」

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転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1356431017/

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/25(火) 19:23:37 ID:FXxa6b7Q

凍るような冷たい感覚を足先に感じ、少女──暁美ほむらは目を覚ました。

「……………」

ぼんやりとした視界で辺りを見回しつつ、華奢な身体を起こす。

身震いさせるほどの冷風が少女を襲う。ふと視線を下に向けると、素足が布団から洩れ出ていた。
触ってみると、自分の身体とは思えないくらいに冷たかい。
なるほど、これは想像を絶する寒さだ。今日は外に出るべきではないだろう。
そう納得し、布団の誘惑に負けたほむらは再度布団に潜り込む。
暖かい感触がほむらを包み込み、そのまま夢の世界へと誘う。

そして、

「ほむらちゃん、雪積もってるよ雪! 折角のホワイトクリスマスだし、お出掛けしようよ!」

微睡みに呑まれ、意識を手放す寸前。部屋の扉が勢いよく開かれた。ついでにそのまま冷たい風も流れ込んできた。

「………………」

もぞもぞと布団をうまく移動し、やってきた人物の顔を確認する。
そこにあったのは、満面の笑顔。
私が布団から出てくるのを今か今かと心待ちにする、鹿目まどかの姿がそこにはあった。

外は目眩むような、一面の銀世界。

ワルプルギスの夜を倒し、初めてのクリスマスがやってきた。


2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/25(火) 19:27:25 ID:FXxa6b7Q
外に出ると、暁美ほむらは失神しそうな感覚に襲われた。

まどか「わあ……歩いてくる時にたくさん見たけど、上から眺める景色も凄いなあ……!」

ほむら「……ええ、そうね。本当に。帰りたいほどに」

目の前の光景に、それぞれは真逆の感想を漏らす。
道路も、街灯も、駐車してある車も、何もかもが白く染まっていた。
おまけに吐く息も白ければ、空も無数の広大雲に覆われており、白い。
まさに白づくめのこの空間を改めて認識したほむらは、改めて大きなため息を吐く。
無論、感動してのものではなく、落胆からである。

まどか「もう、ほむらちゃんったら、そんなに寒いのダメだったの? 何となくイメージ的には平気そうだったんだけど」

ほむらの横で、白いコートを羽織ったまどかが楽しそうな口調で話す。
見滝原が地元であるまどかにとっても、ここまでの大積もりは久々の出来事だったのだろう。心なしかいつもに増して表情が明るい。

ほむら「ええ。昔はそこまででも無かったけど、今はもう全然ね。
 見滝原が寒いのか、元いた場所が温暖だったのかはわからないけど。だからとにかく、家以外には極力いたくないの」

まどか「へえ、そうなんだー」

ほむら「…………」

なんだか意外、と付け加え、まどかは視線を景色に戻した。
ここまで必死に家に戻りたいという意思を伝えていたほむらだったが、今のところ全スルーされている。


3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/25(火) 19:32:27 ID:FXxa6b7Q

そしてまどかはひとしきり景色を堪能し、それから提案した。

まどか「それじゃあ、とりあえず公園まで行こっか。ここじゃ遊びにくいし、公園のほうがたくさん雪積もってるだろうしね!」

ほむら「……まどか。今からでも遅くはないわ。早く家に帰って、一緒に────」

まどか「ほら、ほむらちゃん置いてくよー」

ほむら「…………なにかしらね。最近、可愛かったまどかが強引になっていく気がする」

手を引っ張られ、そんな感想を抱くほむら。
まどかの強引さに多少の狼狽えを覚えながら、輝かしい雪道の第一歩をほむらは踏み出した。


4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2012/12/25(火) 19:39:10 ID:FXxa6b7Q

それから約30分後、幾つかの寄り道を経て二人はようやく公園の入り口に足を踏み入れた。

遊具やベンチ等は相変わらず雪に覆われ、色を変えている。まどかは公園に入るや否や、表情を一層輝かせ広場に向かい走っていく。
対してほむらはそれを微笑みながら見守る。どうやら少しずつ寒いのには慣れてきているようだ。

まどか「見て見てほむらちゃん、足跡一番乗りだよ。この公園は私たちが侵略したよ!」

ほむら「ふふ、そうね。……ところで公園に来たはいいけど、何をしようかしら。雪合戦でもする?」

まどか「うーん、それもいいんだけど。でもやっぱりこんなに降ってるし、何か雪で作ってみたいかな。雪だるまとか」

ほむら「雪だるま……。作ったことはないけど、なんだか面白そうね。
 ならお互い一つの雪だるまを作って、それを見せ合うというのはどうかしら」

まどか「あ、それいいね。よーし、雪だるま初心者のほむらちゃんには負けないからね!」

ほむら「ええ、お手柔らかにお願いします。まどか先輩」

それだけのやりとりを交わし、互いに離れた位置へ移動する。
端から見れば微笑ましい光景。
だが───それは、この瞬間までのことだった。



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