転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1382373315/ 1: 1 2013/10/22(火) 01:35:15 ID:L.VK.cBs >>50話までのネタバレを大量に含む ※ベルユミになるかもしれないしならないかもしれない ※黒トルトさん、救いや希望は駆逐されました ※亀亀更新 2: 1 2013/10/22(火) 01:36:00 ID:L.VK.cBs 今は朝なのか、夜なのか。 ここは壁内なのか、壁外なのか。 ぼんやりと定まらない思考で何度同じことを考えただろうか。 窓もない、黴臭い空気の部屋。 感じるものは肌に触れる外気の冷たさと、日に一度の食事の時にだけ外される猿轡に不快感。 そして、両手を拘束する、やけに太い鎖の重量感のみ。 瞼を閉じれば、そこには変わらず金色の女神がいる。 彼女が、彼女さえいてくれれば、それで構わない、と。 3: 1 2013/10/22(火) 01:36:36 ID:L.VK.cBs ユミル(ん…) 頭上で腕が固定されているせいで、やけに肩が凝る。 しかし揉むことも擦ることも出来ないので、その痛みを治めることは出来ない。 チカチカと瞬く視界の隅に、出て半刻は経っているであろう食事のトレイが見えた。 小さく固いパンと、冷めきったスープ。 兵団にいた時よりも質素な食事ではあるが、何も食べれないよりマシだと既に割り切った。 ユミル「…っ」ガンッ 腕を無理矢理動かし、鎖の音を立てる。 そこまで大きな音ではないが、嫌なほど静かなこの場所ではよく響く。 4: 1 2013/10/22(火) 01:37:16 ID:L.VK.cBs しばらくすると階段を降りてくる足音と、松明に揺らめく大柄な影。 火に照らされた、少し茶色が混じった金髪の男が、表情一つ変えずに姿を見せた。 ライナー「…起きたか」 ユミル「……」 ライナー「飯は食えそうか?」 ユミル「…」コクリ 小さく頷けば、ライナーの腕が後頭部に回って、きつく締められていた猿轡を解いてゆく。 息苦しさから解放され、知らず、息を吐く。 ユミル「…よぉライナー。今は朝か?夜か?」 5: 1 2013/10/22(火) 01:37:52 ID:L.VK.cBs ライナー「今は夜だ。月が大体出切ったくらいだな」 ユミル「はっ、お前が月とか言うと似合わねぇなぁ」 ライナー「…飯だ」 ライナーの骨太な指が、小さくパンを千切る。 ベリベリと音がしそうなほど固く見えるそれにももう慣れた。 特に匂いもしないそれを口まで運んでもらい、一口で食べる。 乾燥しきったパンを口に含めば当然口内が渇く。 ユミルは無理矢理パンを飲み込むと、ん、とスープを要求する。 光沢を失ったスプーンが、冷めきったスープをユミルの口に注ぎ込む。 申し訳程度に味の付いたスープが、きっと用意出来る限界のものなのだろう。 食事の質素さに不満を感じたことは、ない。 続きを読む