転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1565713898/ 1: ◆rbbm4ODkU. 2019/08/14(水) 01:31:38.51 ID:KfF1pJyh0 【艦これ】しおい「人魚」 の続き、ではないですが地続きみたいな話 2: ◆rbbm4ODkU. 2019/08/14(水) 01:33:06.29 ID:KfF1pJyh0 大井「…」 ピンク色の傘を差した少女はある一点をじっと見つめていた。 じっと動かないその明るめの茶髪のセミロングに傘のピンクが僅かに紅く透けている。 大井「…」 雨の中で着るには随分と薄着をしていたが、日本特有のジメッとした夏の暑さに対しては丁度いいようだ。 大井「…」チラ 手元を見る。 左肩には今しがた店で購入した食材を入れたバック。 そして右手には新品の黒い傘がある。 大井「んー…」 人通りの一切ない田舎道のど真ん中で何やら必死に考えているようだ。 3: ◆rbbm4ODkU. 2019/08/14(水) 01:34:21.01 ID:KfF1pJyh0 大井「はい」 「ん?」 黒い傘を差し出した。 朽ち果て最早雨宿りすら出来なくなったかつてバス停だったであろう小さな小屋にじっと座っていた少女に。 大井「濡れますよ」 「…もう、びしゃびしゃなんだけどね」 大井「なら、それ以上濡れないように」 「…なんで私に?」 大井「なんでと言われると…」 言葉に詰まった。確かに何か理由はあった。 しかしそれを言葉にすることが出来なかった。 大井「何となくですよ何となく」 「せっかくの傘を貸しちゃっていいの?」 大井「それは、良くは、ないんですけど…」 差し出した傘を少し引っ込める。 この傘は必要だから買ったものだ。当然あげていいわけはない。 だがそれと同じくらい目の前の彼女を放っておけなかった。 4: ◆rbbm4ODkU. 2019/08/14(水) 01:35:16.12 ID:KfF1pJyh0 「ならいらないよ」 大井「貴方、ここにいなきゃいけない理由が何かあるんですか?」 「いんや。何もする理由がないからとりあえず座ってたんだ」 大井「だったら!」 再びずいと、先程よりも自信たっぷりに傘を差し出す。 大井「歩きませんか?私今あちらの市場からの帰りで、向こうの方に帰るんです」 「歩きって、まあいっか。うん。いいよ」 少女が傘を受け取った。 雨に濡れより深みを増した、傘と同じ黒い髪。左右のおさげや三つ編みもまるで墨汁を吸い上げた筆のようになっている。 薄緑だった半袖のセーラー服も濡れた事で濃くなっていた。 「よっと」 ベンチから立ち上がり傘を差す。 茶色と緑ばかりの田舎道に、黒とピンクが並んだ。 続きを読む