転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442025969/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 11:46:10.13 ID:NXG886aPo 僕は犬だ。名前はわんこ。 わんこは名前じゃないだろうって? いやいやこれは歴とした名前だ。 まずもって飼い犬をわんこなどと呼ぶ飼い主はそうそう居ない。 それに聖來は僕の名前を呼ぶ時、いつだって嬉しそうな顔をする。 だから僕は、聖來の飼い犬の、わんこだ。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 11:47:31.49 ID:NXG886aPo 「たっだいまー♪」 そんな一介の犬である僕にだって、人並みの悩みはある。 「えへへー。Pさんにいっぱい褒められちゃったよー、わんこー♪」 マンションへ帰ってくるなり、鞄を放り出して床に転がる。 この人こそが僕のご主人様、聖來だ。 僕は自分がどうやって生まれたのかとんと覚えていない。 ただ記憶の中の一番底にある笑顔は聖來のものだった。 彼女が毎日のようにセイラ服なる物を来ていたのはぼんやりと覚えている。 そういえば最近あの服を見ないけど、着ないんだろうか? 後になって漏れ聞いた話によれば、仔犬の頃に知り合いから貰われてやって来たらしい。 親代わりに世話を焼いてくれた聖來に、僕は精一杯恩を返すつもりでいる。 「ファンの人もいっぱい集まってくれたし、あー、頑張って良かったー……」 聖來が大きく伸びをして息をつく。 そう、聖來はアイドルなのだ。 最初アイドルというのがどんな物か知らなかったが、見ている内に何となくだが理解はした。 どうやら自身の実力で世界中の人を服従させるのが使命らしい。 僕のご主人にぴったりの仕事だ。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 11:57:44.37 ID:NXG886aPo 「あー……今日は流石に定時は無理があったか…………」 一方、そのアイドルの右腕として駆けずり回る仕事もあるようで。 それがいま青息吐息で眉間を摘む、聖來の専属プロデューサーだ。 「まぁどうせ留守番だったからいいけどさ……ごめんなわんこ、もうちょい待ってな」 「あんっ」 (分かった) 歳は聖來の三つ上だと聞いているが、どうにもそうは見えない。 聖來は童顔だし、プロデューサーは若干だけれど老けて見える。 その両方が合わさって、隣りに並ぶと十も離れて見えてしまう。 本人達は気にしている様子も無いので、僕も特に言う事は無いけど。 「ちょいと休憩するか」 ソファーの上に寝そべっていた僕の横へやって来る。 どさりと腰を下ろして、僕の頭を優しく撫でた。 辺りを見回して他に誰も居ないのを確認すると、独り言(?)を零し始める。 「いいよな、わんこは。聖來といつも一緒に居られて」 「くん」 (うん) 「はぁ、俺も毎日の生活に笑顔と癒やしが欲しいよ……」 出会ってからというもの、ずっとこの調子だ。 いい加減どうにかしないといけない。 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 12:05:42.94 ID:NXG886aPo 「明日はオフかー。早くPさんに会いたいなー……はぁ……」 「最近、一人きりの家に帰るのがどうにも寂しくてなー……はぁ……」 この二人、何故か一向に交尾しようとしないのだ。 続きを読む