転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1563938435/ 1 : ◆J2O9OeW68. 2019/07/24(水) 12:20:35.90 ID:rmJoFnhWo ・アイドルマスターシャイニーカラーズ、芹沢あさひがメインのSSです。 2 : ◆J2O9OeW68. 2019/07/24(水) 12:23:03.90 ID:rmJoFnhWo 青空のことを思い浮かべたとき、私が次いで連想するものといえば大量の水だった。 春先の桜降る並木道を歩くときも、真夏の蒸し暑い交差点に立ち止まるときも、秋晴れの澄んだ路地裏へ迷い込むときも、ちょうどいまみたいに、初冬らしい冷気に満ちた公園のベンチに腰掛けているときも、それは何も変わらない。 いつ如何なる時であろうと、私の中で青空といえば、その直後に続くものは水だ。 しかし、改めて考えてみると、それはとても不思議なことのように思える。 たとえば、普通、水の色は青空みたいな水色じゃなくて、どこまでも純粋に透き通った透明色だ。 それに、青空はどちらかといえば乾いているような印象があるけれど、水はちょうどその対極だ。 あるいは、空は実体を伴わない概念上の存在で、一方の水は触れることのできる物質だ。 違うところなんて他にいくらでも挙げられるけれど、共通項を見出すのはかなり難しい。なのに、私はその二つをどうしても結びつけて考えてしまう。 どうしてだろう? こうして実際に訊かれるまで考えもしなかった。 3 : ◆J2O9OeW68. 2019/07/24(水) 12:23:50.48 ID:rmJoFnhWo 思いもよらない質問に頭を悩ませる私の横で、彼女は先ほど自動販売機で買ったばかりのミネラルウォーターを掲げてみせた。 「そもそもの前提として、一般に水と称される液体はおおよそ無色だ。それはいい?」 「勿論っす」 「そのことを踏まえた上で、じゃあ、あさひは水という言葉からどんな色を連想する?」 半透明のボトル容器に支えられた水面はぴたりと凪いでいる。 普段、私が宙に思い描く水槽もまた、眼前のそれと同じくらいに穏やかで、しんと静まっている。 その二つを頭の中にぼんやりと並べてみて、なんだか変な話だ、と私は思った。 水に限らず、液体は流動性をもつ物質だ。止まっている方がおかしい。 「水色っすね」 私は答えた。 プロデューサーさんはわざとらしく首を傾げる。 「水色、というのは水の色のことではなく、青を薄めた色という意味だよね」 「そうっす」 「だったら、もう少し具体的な補足が欲しいな」 「具体的、っすか?」 「偏に水色といっても色々ある。文字通り、色々と。たとえば、そうだな、あさひの思う水色からさらに連想されるものは何だろう?」 4 : ◆J2O9OeW68. 2019/07/24(水) 12:24:48.13 ID:rmJoFnhWo 私はゆっくりと目を閉じて、それから想像する。 ここではないどこか遠くにあるものについて思いを巡らせようというとき、視界から飛び込んでくる一切の情報なんてただのノイズだ。 だから、遮断する。それが私にとって、物事と向き合うときにおけるある種の作法だった。 大量の水色をいっぱいに閉じ込めた何かが目の前にある。 たったそれだけの状況を、しかし頭の中に詰め込んだ全部を一点に集中させて想定する。 続きを読む