転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1563022859/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/07/13(土) 22:00:59.75 ID:MAkUBpd1O 本作品は、現在公開中の【ミュウツーの逆襲 EVOLUTION】並びに、【ミュウツーの逆襲 1998】の内容が含まれております 未視聴の方はくれぐれもご注意ください それでは以下、本編です 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/07/13(土) 22:03:52.45 ID:MAkUBpd1O 「ご主人様、こちらです」 「ああ」 その日、私は久しぶりに人間の街へと赴いた。 とはいえこの姿では目立つので赤い帽子を目深に被り、人間の服に袖を通して変装している。 何かと便利なポケモンセンターに勤務するジョーイに催眠術をかけ、目的地まで案内させた。 「随分と賑わっているな」 「ご主人様の映画なのですから、当然です」 そう、私がわざわざ人間の街に足を運んだのは、自身が出演する映画を鑑賞する為だった。 その望みを果たすべく甲斐甲斐しくチケットを購入してくれたジョーイの案内に従い、指定されたスクリーン最奥の中央付近の席に着く。 ジョーイ曰く、映画を観る際、最前列だとスクリーンを見上げる姿勢となる為、最奥の中央から鑑賞するのが望ましい、とのことだった。 しかし、残念ながら私の席は最奥の中央付近であり、真ん中の席からはひとつズレていた。 先に座席を予約した者に、席を奪われた形だ。 「申し訳ありません、ご主人様。私が遅きに失したばかりに、最上のお席をご用意出来ず……」 「よい。一席ずれた程度、微塵も問題ない」 心底申し訳なさそうに謝罪をして、深々と頭を下げるジョーイに対し、自らの寛大さを示して赦しを与えると、彼女は嬉しそうに破顔した。 「ありがとうございます、ご主人様」 「お前のおかげで映画館に来ることが出来たのだ。礼を言うのは、むしろこちらのほうだ」 「身に余るお言葉、恐悦至極でございます」 そんなやり取りをしながら、ふと思う。 この私が人間に礼を言う日が来るとは。 自分も丸くなったものだと、感慨に耽った。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/07/13(土) 22:06:07.97 ID:MAkUBpd1O 「ご主人様、ポップコーンはいかがですか?」 「頂こう」 上映まで、幾ばくかの猶予がある。 それを見越して、気の利くジョーイはポップコーンと飲み物を事前に購入していた。 上映中に何かを口にするのは人間の作法に疎いこの私でも気が引けるのだが、上映前ならば何ら問題はあるまい。ポップコーンを頬張る。 「お口に合いましたか?」 「ああ、実に美味だ」 「それは良かったです。ストロベリー・キャラメル味にして正解でしたね」 ジョーイのセンスは素晴らしかった。 イチゴの酸味とキャラメルの甘さが絶妙だ。 夢中でパクついていると、喉が乾いてきた。 「ご主人様、お飲み物です」 「頂こう」 気の利くジョーイに促され、ポップコーンによって奪われた口腔内に水分を流し込む。 ピリリとした炭酸と、爽やかな風味。 これは、まさか。目を見張る私にジョーイが。 「コカコーラのグレープ味でございます」 言われて、納得する。 やはり、そうか。味な真似を。 この私のイメージカラーが紫であることから、グレープ味のコーラを選択したのだろう。 やはり素晴らしいセンスの持ち主だと思った。 続きを読む