不死講

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転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1550832802/

1: ◆CItYBDS.l2 2019/02/22(金) 19:53:22.66 ID:Q3Zc+mWd0

第一夜 情熱の不老不死

第二夜 異世界に飛ばされた僕は探偵稼業で食っていく

第三夜 不死講





2: ◆CItYBDS.l2 2019/02/22(金) 19:55:03.69 ID:Q3Zc+mWd0
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第一夜 情熱の不老不死

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3: ◆CItYBDS.l2 2019/02/22(金) 19:55:30.89 ID:Q3Zc+mWd0
静かな研究室にプシューッと空気の抜ける音が広がった。
研究室には、肩まで伸びた長い白髪にひざ丈まである白衣、上から下まで白で染まった男が一人。
その手には、ピンク色の液体で満ちた円筒状のガラス管が握られている。

「遂に完成したぞ。有史以来、人類が夢に見た薬だ!」

白髪の男の隣には、若い男が一人。彼もまた染み一つない白衣に袖を通している。

「博士、おめでとうございます。ところで、これまで手伝ってきて何なのですがこの薬は一体何なんですか?」

「なに?君は助手だというのに。そんなことも知らずに手を貸してくれていたのか。まあいい、これはかつて秦の始皇帝も喉から手が出るほど欲した不老不死を実現する薬なのだ」

「不老不死ですか?」

「そう、この薬を一たび飲めば決して病気には罹らず、ケガをしてもすぐに治ってしまう、老いることもなくなり、文字通り永遠に生き続けることができるのだ」

助手の訝し気な表情を見ると、博士はニヤリと口角を上げ試験管の液体を一気に喉に流し込んだ。
そうして、まるでそれが一連の流れであるかのように机の引き出しから銃を取り出し自身の頭を打ちぬいた。

「は、博士!?」

助手は、頭から血を流し前のめりに倒れた博士へと駆け寄る。
驚いたことに博士の顔は、とても死んでいるとは思えないほど安らかなものであった。と思いきや、どうも様子がおかしい。
血色は以前にもまして良く、髪も新雪の振った朝のような白から黒光りしたものへと変わり、先ほどこめかみにできたばかりの風穴は完全に塞がれていた。

「ははは、驚いたかね?君が、『不老不死だなんて信じられない』という顔をしていたから実証してあげたまでだ」

「うわぁ、びっくりしたなあもう。しかし、折角できた薬を一人で飲んじゃうなんてズルいですよ!」

「案ずるでない助手君、ちゃんと君の分もある。それどころか、この薬は安価で製造可能だ。全人類に不老不死を与えることができるぞ!」

博士の言葉通り、そのクスリは地球上のどこでも入手が容易な植物で作られており。
ほどなくして、世界から死は消え去った。


4: ◆CItYBDS.l2 2019/02/22(金) 19:55:58.25 ID:Q3Zc+mWd0

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「いやあ、博士の発明は世界を変えてしまいましたねえ」

若さを取り戻し、筋肉ではち切れそうな白いシャツを着た博士は、もくもくと電卓を叩いている。
助手の称賛の声は、博士には届いていないようだ。

「そういえば、こんな話を聞きましたよ。とある冒険家が首狩り族に殺されたそうなんですけど、刈り取られ晒されていた頭から体が生えて村から逃げ帰ってきたそうです」

「実はこの話には続きがありまして、村に残った胴体からも頭が生えて無事に帰還したって言うんです。この場合、どちらが本人なんでしょうね?」

助手の問いかけにも、やはり博士は答えない。

「まったく、今どき仕事に情熱を注いでいるのは博士ぐらいのものですよ」

不老不死の薬は、世界を大きく変えた。
あまねく医療関係者を退職へと追いやった一方で、科学技術や芸術の分野において一段越しでの発展を成し得たのだ。
それもそのはず。好きでもない仕事を、生きていくため、飯を食べていくため、家族を養っていくためだけに勤めていた人々が、その楔から解放され。
自身の興味のあることにのみに、力を注ぎだしたからだ。

優秀な頭脳を持った医療関係者たちの一部が、別分野の仕事へと転職したこともその世の流れに拍車をかけた。

科学は、もはや魔法と見分けがつかないほどに発達し。
美術館には伝統と前衛が両立した作品がこれでもかというほどギュウギュウ詰めにされるほどである。

人々の生活圏も、あっという間に宇宙まで広がり。今では、太陽系の外に達した者も居ると噂されているほどだ。
しかし、そうした人類の進歩も長くは続かなかった。

「なにせ時間は無限にあるのだ、焦ってどうなる。ゆっくりいこうぜ」
とある作詞家の書いた曲の一節であるが、これが人々の心を打ったのだ。

永遠の時を手に入れた人々は、いつしか無限の怠惰を享受するようになり。技術や芸術の進歩に力を注ぐものは徐々に減っていってしまった。
そうして世界は堕落的で無変化なものへと落ち着いてしまったのである。

「ねえ博士、アンデッド溢れる世界で今度はどんな薬を作ろうって言うんですか?」

「……止めてくれるな助手よ。どうやら、私が飲んだ不老不死薬は後に作られたものよりずっと強力だったらしい」

「どういうことです?」

「我が情熱は、一向に止まる気配がないのだ。どうやら、肉体と共に私の情熱までが不老不死となってしまったらしい」

「それはまた難儀なことですが仕方ないですね、特にすることもないのでお手伝いしますよ。それで何の薬を作ろうとしているのですか?」

博士は、電卓をたたき続けていた手を止め助手のほうを振り返りニヤリと笑った。

「不老不死者を殺す薬さ」



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