転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1558440704/ 1 : ◆Hnf2jpSB.k 2019/05/21(火) 21:11:44.59 ID:+UxOTxhw0 ・地の文 ・モブの話 ↓九分九厘関係ないけど同じ世界線の話 【モバマス】千夜の姫に宿る炎 よろしければお付き合いください 2 : ◆Hnf2jpSB.k 2019/05/21(火) 21:13:18.55 ID:+UxOTxhw0 人生何があるか分からない、などという言葉は飽きるほど聞いてきた。 節目節目にこの身をもって経験してきたことでもある。 だがしかし、これは予想できなかった。 人生も終盤に差し掛かろうという男が、我が子よりも歳の離れた少女に入れあげるだなどと。 この歳になって何を血迷ったことを、と。 そう思わないでもない。 その一方で、どこか楽しんでいる自分もいるのだ。 今まで触れる事すらなかった世界がそこにある。 何があるのか、何が見えるのか。 枯れたと思っていた好奇心が、ふつふつと湧いてくるのだ。 それが純粋に嬉しくもあった。 3 : ◆Hnf2jpSB.k 2019/05/21(火) 21:14:12.33 ID:+UxOTxhw0 *************************** 定年まであと何年、という所まで来てしまった。 そう思うと、何やら妙な焦りを感じてしまう。 仕事一辺倒に生きてきた私が、この先どう生きていくのか。 趣味らしい趣味もなく、休日といえば寝て過ごしてきた私が、だ。 今のところ、年齢なりの健康体を保っている。 ならば何か新しいことに挑戦する、というのも一つの手だろう。 けれど、為にする挑戦が長続きする性格でないことは、自分が一番よく分かっている。 「まあ、何も今日明日という話でもないわけだし」 誰に聞かせるでもない呟きが漏れる。 こうやって問題を先送りにしている内に、その日はやってくるのだろう。 4 : ◆Hnf2jpSB.k 2019/05/21(火) 21:14:58.22 ID:+UxOTxhw0 このままいけばどうなるのか。 別に、やるべきことがない訳ではない。 こんな私を支え続けてくれた妻に、恩返しもせねばなるまい。 文句を言われることも多々あったが、それでも長年連れ添ってくれた。 折に触れて感謝を伝えてはいる。 だが、折角まとまった時間ができるのだ。 温泉好きの妻に旅行の一つもプレゼントして、大いに羽を伸ばしてもらおう。 それはいい。 だが、私という人間はそんなに殊勝にはできていない。 余生を妻の為だけに使うなど、どだい無理な話だ。 おそらく妻も、そんなことは望んでいないだろう。 ではどうするのか。 解決策は一向に見つからない。 それが焦燥感の正体だった。 5 : ◆Hnf2jpSB.k 2019/05/21(火) 21:16:09.55 ID:+UxOTxhw0 *************************** 耳に障る着信音で目覚める。 画面に映るのは、今日という日には見たくなかった文字だった。 何が悲しくて、休日に会社からの電話で叩き起こされなければならないのか。 「……もしもし」 本音では無視を決め込みたいが、そういう訳にもいかない。 いい知らせでないことは百も承知である。 だからこそ私は、この電話に出なければならなかった。 それなりの役職と給与には、相応の責任と義務が生じる。 ならば仕方がない。 せめてこの呼び出しが致命的な問題によるものでないことを祈ろう。 重い気分を無理やりに振り払い、電話口に集中する。 社畜、という単語が頭をかすめた。 続きを読む