転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467542146/ 1: ◆C2VTzcV58A 2016/07/03(日) 19:35:46.58 ID:4B86kKE8O ――ボクはアスカ。二宮飛鳥。 ――キミは今こう思っただろう。『こいつは痛いヤツだ』ってね。でも思春期の14歳なんてそんなものだよ。 ――キミとボクとでどんな未来が見られるかな。楽しい未来だといいね。 ――さあ、往こうか 2: ◆C2VTzcV58A 2016/07/03(日) 19:36:47.83 ID:4B86kKE8O 飛鳥「………」 夢を見た。 まだ中学生だったころの自分。彼に出会い、アイドルのセカイへ飛び込んだばかりのころの自分。 ……久しぶりに、当時のことを鮮明に思い出した。 飛鳥「懐かしいな」 ベッドから降りて、なんとはなしに姿見の前に立つ。 昔と比べれば、少しばかり背は伸びた。スタイルも大人らしくなった。 ……頭のてっぺんにあるくせっ毛は、あの頃と何も変わらないけれど。 飛鳥「これは、チャームポイントということにしておこう」 さあ、いつまでも鏡の向こうの自分とにらめっこしているわけにもいかない。 今日も仕事だ。早めに準備を済ませてしまおう。 まずは、シャワーからかな。 3: ◆C2VTzcV58A 2016/07/03(日) 19:37:48.95 ID:4B86kKE8O シャワーを浴びて、着替えて、朝食を作って食べて。 いつも通りのルーチンをこなしながら、朝のニュースに耳を傾ける。 『今日のゲストは、目下赤丸急上昇中の絵本作家、森久保乃々さんです』 『ど、どうも』 『よろしくお願いします』 『はい……がんばって視線を合わせます』 飛鳥「へえ。朝から懐かしい顔だ」 卵焼きもいい塩梅に焼けたし、今日はいい日になりそうだ。 コーヒーをすすりながら、しばらく旧友のトークを楽しむことに決めた。 4: ◆C2VTzcV58A 2016/07/03(日) 19:39:11.51 ID:4B86kKE8O ゆったりと朝食を終えたら、歯を磨いて化粧をして。出勤前の最終調整というヤツだ。 飛鳥「そーんざーいしょうめいをー♪」 気分が昔に戻っているのか、自然と口ずさむのは懐かしのデビューシングル。昔はライブのたびに歌っていたものだけれど、最近は少しご無沙汰だったりもする。 飛鳥「……よし。こんなものかな」 そして、最後の仕上げ。ボクを彩る、装飾品。 今日は何色にしようかと手を伸ばしたところで……その装飾品の姿が見えないことに気づく。 飛鳥「……寝ぼけているな」 それを、エクステをつけていたのは、夢の中の自分。過去の自分。 今はそうじゃないことを、すっかり忘れてしまっていた。 5: ◆C2VTzcV58A 2016/07/03(日) 19:39:58.28 ID:4B86kKE8O 飛鳥「いってきます」 部屋を出て、エレベーター……はしばらく来そうになかったので、階段を使って下まで降りる。 玄関まで出ると、まぶしい朝日の光が体中に降り注いできた。 ちょうどマンションの管理人さんが掃除をしていたので、挨拶をしておく。 飛鳥「おはようございます」 管理人「あら飛鳥ちゃん、おはよう。今日も綺麗ねえ」 飛鳥「そちらこそ、今日はお肌のノリがいつもよりノッてますよ」 管理人「そう? うふふ、まだまだ私もイケるかしら。40にしてアイドルデビュー、なんちゃって」 飛鳥「あ、あはは」 こういう場合、どう返すのが正解なのか。 24年生きてきたけれど、いまだにうまい切り返しはパッと出てこない。 飛鳥「……っと。風が」 冗談混じりの会話を二言三言交わしていると、朝風に勢いよく頬を叩かれた。 反射的にスカートを抑えながら、「そういえば昔は、もっと短いのを好んでいたな」なんてことを思い出す。 ……どうにも今朝は、過去を思い出してばかりだ。 飛鳥「あんな夢を見たからかな」 管理人「どうかした?」 飛鳥「いえ、なんでも」 イタズラな風になびくのは、長く伸ばしたボク自身の栗色の髪。 この色は、嫌いじゃない……いや、好きだ。 続きを読む