転載元 : https://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1557928989/ 1: 名無しさん@おーぷん 19/05/15(水)23:03:09 ID:huq アイドルマスターシンデレラガールズです。 佐藤心さんのお話です。 2: 名無しさん@おーぷん 19/05/15(水)23:03:37 ID:huq 音楽が聴こえる。頭のどこか遠くの方で。小さな小さな音楽が聴こえる。 その音楽はどこかで聴いた事があって、楽し気に悲し気に、そして寂し気に奏でられていた。 遠い遠い世界に居た意識が徐々に徐々にこちらへと戻ってくるにつれて、その音楽も近くなっていた。 あぁ、これは鼻歌だ。 きっと誰かが歌っているのだろう。小さな声で優しい声で、そして美しい声で。 「……モーツァルトでしたっけ」 「あ、ごめん。起こしちゃった?」 俺が鼻歌の心当たりを尋ねると、彼女は歌うのを止めて、窓の外からこちらへ顔を向けた。 「いえ、大丈夫ですよ。それより今のって……」 「うん。モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』」 曲名を言われてもピンと来ない。きっと俺がわかっていないのを表情から察したのか彼女はまた小さく鼻歌を歌ってくれた。楽し気に悲し気に、そして寂し気に。 3: 名無しさん@おーぷん 19/05/15(水)23:04:13 ID:huq 「どう? 有名だし聴いた事あるでしょ?」 「子供の頃、その替え歌が流行りましたね」 「あはは、どこも一緒だね」 どうやら彼女のところでも流行っていたらしい。いったい誰がああいうものを広めるのだろうか。 「心さんは眠れないんですか?」 再び窓の外を眺め始めた彼女に問いかける。彼女の横顔は歌声と同じように、楽し気で悲し気で、そしてどこか寂し気で。 「んー……。なんとーく、そんな日ってない?」 「ありますね」 俺も彼女に習いベッドに横たえていた身体を起こして、同じように窓の外に視線を移した。どうやら世界はまだまだ眠らないらしい。あちこちで光が行ったり来たりしている。 「今のはぁとはそんな日、かな」 いつも騒々しく、表情をころころ変えている彼女なのだが、今ばかりは年相応に落ち着いた憂いを帯びた横顔を見せていた。 続きを読む