転載元 : https://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1555867418/ 1: ◆ovkeuV2NPI 平成31年 04/22(月)02:23:38 ID:Rn2 ・プロローグ この物語は小さな英雄の物語。 一人の英雄が、一人の少女を取り戻す物語。 その少女は、物語に呪われた少女。 呪いを解くのに必要な物は、やはり物語。 英雄の名は南条光。 少女の名は池袋晶葉。 物語の始まりは、みんなの事務所から。 2: ◆ovkeuV2NPI 平成31年 04/22(月)02:26:31 ID:GLX ・第一幕 「おはようございます!」 扉が開くと、事務所の一室に少女の凛々しい声が響き渡る。 彼女の名前は南条光。 『ヒーロー』を目指す14歳のアイドルだ。 デビュー後しばらくは伸び悩み、雌伏の時を過ごしていた。 しかしついに飛躍のきっかけを得て、近頃は徐々に仕事が増えている。 「おはよう、光!」 「おはよう光、今日も元気だな。」 「晶葉、もう来てたのか!レッスンまではまだ時間あるよね?」 挨拶を返したのはプロデューサー、そして池袋晶葉。晶葉も光と同じく14歳のアイドルで、天才ロボ少女……を自称している。 ロボットを作るのが好きなアイドルで、ステージ演出の企画を自ら行うこともある。 役者としての仕事を多くこなしているが、光と比較して人気は伸び悩んでいる。 3: ◆ovkeuV2NPI 平成31年 04/22(月)02:27:56 ID:GLX 「ちひろさん!おはようございます!」 「あら、光ちゃん、おはようございます」 少し後に小さな段ボール箱を抱えて部屋に入ってきたのは千川ちひろ。 このアイドルプロダクションの事務員の一人で、今は光たちがいる部署を主に担当している。 「ファンレター、いっぱい届いてますよ!」 「うわあ、ホントだ!あ、晶葉にもいっぱい届いてる!」 「プロデューサーさんと私で整理しますから、ちょっと待っててくださいね」 このプロダクションでは、ファンレターは送付先のアイドルごとに分けられ、プロデューサーの手で確認したのちにアイドル本人の手に渡るようになっている。 「うん、楽しみだ!ファンの声が直接届くのは、勇気になるから!」 4: ◆ovkeuV2NPI 平成31年 04/22(月)02:31:23 ID:Rn2 各々がレッスンの準備やスケジュールを行い、少しの時間が経過した後。 「光ちゃん、晶葉ちゃん、ファンレターの確認が終わりましたから、持っていってくださいね」 「ありがとう!さっき見たときよりちょっと減ってる気がするけど、プロデューサーやちひろさんが取り除いてるのってどういうやつなんだ?」 「そうですね、光ちゃんは人気が出てきましたし、トラブルを避けるためにもう一度しっかり説明しておいた方がいいですよね」 ちひろはプロデューサーに軽く確認を取り、事務員としての真面目な表情でファンレターに紛れて届く通称『不幸の手紙』について説明をした。 光は軽い気持ちで訊ねた様子だったが、居住まいを正しまっすぐちひろの目を見て説明を聞いていた。 「……宗教の勧誘とかならまだいいんですが、子供に見せちゃいけないようなお手紙も届くことがありますからね。だからこういった説明も私のような女性が行うべきとしています。」 事務所の方針で決まっていますから、とプロデューサーに軽く目配せをして、ちひろは短い説明を終えた。 続きを読む