転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1553434189/ 1 : ◆TOYOUsnVr. 2019/03/24(日) 22:29:50.34 ID:yULJlY3j0 全身から出た汗はトレーニングウェアを上下の区別なく、ぐっしょりと濡らす。 鉛のように重くなったシャツは背中にはりついていて、格別の気持ちの悪さを誇っていた。 ダウンを済ませて、早いところシャワーを浴びなければ。 使用した筋肉を一つ一つ丁寧に伸ばし、アイシングをしていく。 その作業に没頭していると、不意に視界が塞がれる。 何者かの手によって頭の上からタオルをかぶせられたらしい。 「もう。何?」と抗議しながら、片手でそれをはぎ取って、仰け反るようにして背後を見やる。 そこには私を担当するプロデューサーがいた。 2 : ◆TOYOUsnVr. 2019/03/24(日) 22:30:55.14 ID:yULJlY3j0 「お疲れ様。夏葉」 「あら、プロデューサー」 「今日も精が出るな」 「当然でしょう?」 「クールダウンは終わったか?」 「ええ」 「じゃあすぐにシャワーを浴びること。風邪引くぞ」 「そのつもりよ。でも」 「乾拭きとモップがけは俺がやっとくから、ほら、行った行った」 「……じゃあお言葉に甘えるわ。ありがとう、プロデューサー」 「お安い御用だって」 プロデューサーはにこりと微笑んで、清掃用具の入っているロッカーに向かう。ぼんやりとその様を眺めつつ立ち上がり、レッスンルームを後にした。 3 : ◆TOYOUsnVr. 2019/03/24(日) 22:33:04.53 ID:yULJlY3j0 更衣室に置いておいた自身の鞄から着替えとタオルを取り出して、代わりにぐしょぐしょのレッスンウェアをしまう。 そうして、併設されているシャワールームに入った。 シャワーから流れる水の温度を指の先で二度、三度と確かめたあとに、一思いに頭から浴びる。 全身の汗が洗い流されていく、すっきりするこの瞬間は最後のご褒美のようで嫌いではない。 シャワーを浴び終えて、着替えに袖を通し、髪を乾かしていると、携帯電話にメッセージが届いた。 送り主はプロデューサーからで、ただ一言『出たとこに車つけて待ってる』とある。 彼にとっては、もう既に送っていくということは決定事項らしい。 遠慮の余地くらい残してくれてもいいのに、と少し呆れつつもまたしても私は厚意に甘えることにする。 さて、送ってもらうのであれば、あまり待たせるのも忍びない。 手早く支度を済ませるとしよう。 続きを読む