転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418202792/ 1: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:13:22.68 ID:/DHBZG2j0 あらすじ 孤独と悪意の狭間に生まれた偶然が、少女と彼女を夜明け前の公園で引き合わせた。 注 7人が行く、の第5話。 各個人の設定は全てドラマ内のものです。 それでは、投下していきます。 2: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:14:15.42 ID:/DHBZG2j0 7人が行く・シリーズリスト 第1話 松山久美子「7人が行く・吸血令嬢」 第2話 伊集院惠「7人が行く・狐憑き」 第3話 持田亜里沙「7人が行く・真鍋先生の罪」 第4話 大和亜季「7人が行く・ハッピーエンド」 3: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:15:01.44 ID:/DHBZG2j0 メインキャスト 多田李衣菜 服部瞳子 SWOWメンバー 1・太田優 2・持田亜里沙 3・伊集院惠 4・大和亜季 5・財前時子 6・松山久美子 7・仙崎恵磨 4: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:19:11.55 ID:/DHBZG2j0 序 花の満開の下 今年の藤棚は見事だった。 だが、私が眺めていたのは妻の横顔だった。ぽつりと「不気味ね」と言った口の動きが良く見えた。 「どうしてだい?今年の藤は見事だろう」率直な感想を返すと、あなたはいつも表面しか見ないのね、と言いたげな表情で妻が見て来た。 「花の下から何か出てきそうで」不安げに妻が言う。 「映画の見過ぎだよ」と、我ながら気の利かない返事だ。25年以上も子供もなくただ二人でいたのに。 「あら、あなただって思ってるでしょう。さっきから藤の花を見てないもの」同時に自分ですら気付かないことを相手に当てられる。 そう、やっと自分が感じているものを自覚する。不気味さ、だ。 藤棚の下には特に何もない。ベンチも置かれておらず、花と地面の間には何もない。 しかしながら、そこには空間がある。何も無い満開の下が存在する。 私と妻はそこに気づいていた。だからこそ。 空からひらりひらりと舞い落ちた白い羽根に目を取られた。その直後に。 誰もいなかった満開の下に。 美しい少女が立っていても、それが現実だと受け入れられた。 白い衣装に身を包んだ少女は、ぼんやりと頭上の藤の花を眺めていた。 その透き通るような瞳から涙が一筋落ちて、頬を伝い、滑らかな首筋へと落ちて行った。 感嘆した、隣にいる妻も同じことを思っていたに違いない。 それは孤独だった、なんと美しいカタチをした…… 故に、私と妻は手を差し伸べて、この記憶は彼方へと消える。 「さぁ、帰ろうか。冷えてしまうよ」 「はい、お父さん」美しく育った娘の返事は明瞭だった。 序 了 5: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:26:50.41 ID:/DHBZG2j0 多田李衣菜・1 多田李衣菜の自室 多田李衣菜「……まだ、こんな時間だ」 多田李衣菜 S大学付属高校の生徒。音楽が好きな女の子だが、最近悩みをかかえている。 まだ日も登っていない時間に起きた理由はわかってる。 早く寝たから。ギターの練習も、音楽を聴く気にもならなくて。 それと、気分が悪いから。 不貞寝はこの気持ちを楽にしてくれない。わかってるけど、そんなの。 音楽プレイヤーの電源を入れようとして、やめた。 どんな陽気な、音楽、では気分が落ち込みそうな気がした。 カーテンと窓を開けて、秋の冷たい空気を吸う。 散歩に行こう。冷たい空気があたしを落ち着かせてくれると、思って。 6: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:28:52.91 ID:/DHBZG2j0 多田李衣菜・2 河川敷 川沿いにある公園は静かだった。 花壇の花が咲いていた。ちょっと暗くて、色鮮やかには見えない。 なんだか、疲れてきて、あたしは土手に座りこんだ。 空も気持ちも晴れない夜明け前。 ため息を吐いて俯いた私に、声はかけられた。 7: ◆ty.IaxZULXr/ 2014/12/10(水) 18:33:37.68 ID:/DHBZG2j0 多田李衣菜・3 服部瞳子「おはよう」 服部瞳子 李衣菜が夜明け前の公園で出会った女性。長身の美女。 李衣菜「……おはようございます」 瞳子「隣、座ってもいいかしら」 李衣菜「……どうぞ」 瞳子「ありがとう。それじゃ失礼するわね」 李衣菜「……」 瞳子「……」 李衣菜「……あの」 瞳子「話したくないなら、無理に話さなくてもいいのよ」 李衣菜「……なら、そうします」 瞳子「ええ」 続きを読む