転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1457705765/ 1 :しぃな ◆CB7w5rWLD6 2016/03/11(金) 23:16:05.11 ID:1urZWwmh0 黒い森、闇の世の夢、峰に姫 地の文が入っているので、苦手な方はブラウザバック推奨です。 よろしければこちらを聴きながら読んでみてください。 これを書いている時の作業用BGMで、合ってると思います。 https://www.youtube.com/watch?v=MWS1lRoGvH0&feature=youtu.be 前スレと関係あるかは尻ません。 前スレ:【R-18】ケイ「私のアヘ顔戦略大作戦? エキサイティン!」【ガルパンSS】 2 :しぃな ◆CB7w5rWLD6 2016/03/11(金) 23:16:55.50 ID:1urZWwmh0 ■■■ 冬の終わりは新しい季節を連れてきたが、同時に私の大事な人を奪って行った。 黒い森には雷雨、天空には彼女をあざ笑うかのような、どんよりとした雲。 私の目の前の女生徒は今日をもってこの学校の生徒ではなくなった。 女生徒は今まさにこの艦から降りるところで振り返ると一言。 「あぁ、逸見さん」 逸見さん。それが私の名前だ。 けれど、昨日まで呼んでくれていた名前ではなくて、その違和感に少し戸惑った。 「どうしたの? 傘も差さずに。もしかして見送りに来てくれたの?」 傘を差していないのは彼女の方でもあり、彼女は自分のことには無頓着なのだ。 無頓着というか、周りを気にしすぎた果ての自己犠牲の上にあるのが彼女なのだ。 今時そんなの流行らないのに、彼女はそういう性格だった。 そして私はその性格が嫌いだった。 3 :しぃな ◆CB7w5rWLD6 2016/03/11(金) 23:20:06.17 ID:1urZWwmh0 これは見送り……なのだろうか。いや、違う。 連れ戻しにきた、というのは少々語弊があるように思えた。 「優しいんだね、逸見さんは」 にこりと、少し寂しげに笑う彼女に私が抱いたのは。 焦りと疑い、不安、後悔、それと少しの怒りだった。 ザアと視界いっぱいに冷たい雨が降り注ぐ。 とっくに制服も下着も靴もびしょびしょで、カラダも芯まで冷えてしまった。 それでも互いにそのまま無言で立ち続けている。 何を話せばいいのだろう。 どうして何も言ってくれなかったの? どうして、こんな別れになってしまったの? 暗い影を地に落とした彼女のその影は、生憎の雨でよく見えなかった。 4 :しぃな ◆CB7w5rWLD6 2016/03/11(金) 23:21:13.52 ID:1urZWwmh0 ◇◇ 「こっち、こっちよ」 周りを気にしながら手を少しあげ、彼女に気づいてもらおうとする。 幸い、喫茶店内には戦車道を選択している生徒はいないけど念には念を。 けれど一向に彼女は気づかないから、結局私は席から立ち上がって彼女を迎えに行くのだった。 「ほら、ここよ、ここ」 「あぁ、そこにいたんだ」 「どうしてあんなに手を振ったのに気づかないのよ。抜けてるわよね、ホント」 「あはは……。あの、ごめんね、いつもこんなので……」 こんなので、とはこうやって隠れて会っていることを指しているのだろう。 「はぁ? どうして」 「だって、堂々と会えないし……いつもこうしてこっそり会ってもらってるし……」 「ははぁん。なるほどね、アンタらしいわ」 彼女は席に着きながら顔を曇らせる。いつもこうだ。 だから私は私なりに精一杯の言葉を彼女に送る。 「……いいのよ、私はこれで」 赤くなる顔を隠すためにテーブルのメニューでも覗いてみながらそっけなく言ってみる。 彼女はまた一言、ごめんねと呟いた。私はそれを気にしないように話を進める。 続きを読む