転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546785853/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/06(日) 23:44:13.76 ID:NVRX8yZB0 「なんで彼氏作らないの?」 なんてことを友達にしょっちゅう聞かれる。 その度に茶を濁すのは、けっこー疲れる。 真っ先に口をつく理由は、機会がないから。 恋人が爆誕するようなイベントに恵まれない。 それでも相手が納得しない場合は、こう言う。 「付き合うって、よくわかんないから」 クリスマスにかけて急増した大勢のカップル。 そいつらを眺めていると、不思議で仕方ない。 どうやって、相手を選んでいるのだろうか。 それが気になって、ちょっと聞いてみると。 「えっ? 告られたから、断る理由もないし」 なるほど。そうきたか。さっぱりわからん。 「もともと、付き合う気はあったの?」 「ちょっとはね」 「ちょっとって……ちょっとでいいの?」 「いいんじゃない? 今、すごく幸せだし」 ああ、そうですか。末永くお幸せに。畜生。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/06(日) 23:47:42.87 ID:NVRX8yZB0 「じゃあ、ちょっと質問を変えるわね」 「何?」 「彼氏が欲しいとは思わないの?」 「すごく幸せになれるなら、是非とも」 極めて自然な回答だろう。誰でも幸せを望む。 「そんな風に受け身だから駄目なのよ」 「えっ? 駄目なの?」 「付き合った相手の幸せも考えてあげないと」 「あっ……はい。すみません……」 友人の諫言はまさに目から鱗の至言だった。 自分だけ幸せになれば良いのではない。 いつの時代の奴隷制度だ。あり得ない。 付き合うならば、相手の幸せも考えないと。 「なんか……めんどくさいなぁ」 「はあ……恋人が出来る日は遠そうね」 「ほっといて」 呆れられてもこればかりはどうしようもない。 相手を幸せにするのは、非常に大変だろう。 私が喜ぶことをしても、相手が喜ぶかは不明。 ましてや幸せの尺度や価値観など予測不能だ。 我々人間は個別の自我を持っているのだから。 「性格が合う人を見つけたら?」 「そんな人、居ると思う?」 「せめて、もう少し、協調性があったら……」 「なにそれ! どういう意味!?」 「短気なところも直したほうがいいわね」 本当に耳が痛い。私だってわかってるっての。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/06(日) 23:49:59.56 ID:NVRX8yZB0 「悪い。先、帰っててくれ」 「あ、うん」 近頃、男友達の付き合いが悪い。 独りでトボトボ帰宅するのは、寂しい。 たぶん、彼女が出来たのだろう。 前に、それらしいことを口にしていた。 クリスマスにはデートをしたそうな。 そこで告白イベントでもあったのだろうか。 「……くそっ」 そこまで想像して思わず悪態を吐いてしまう。 帰りにゲーセンに寄ったり、マックを食べたり、公園のブランコに乗って駄弁りたいのに。 恋人なんてものが居るから、楽しみが減った。 どこの誰かは知らないけど、無性に腹が立つ。 「……ムカつくなぁ」 腹わたが煮えくり返って、ふと気づく。 「あれ? なんで、胸が痛いんだろ……?」 原因不明の胸の痛み。ズキズキする。痛い。 胃潰瘍か? それとも心筋梗塞の前兆? 怖くなって、駆け足で帰宅して、布団を被る。 続きを読む