転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1463920447/ 1: ◆7chPYS4ayA 2016/05/22(日) 21:34:07.59 ID:ZGeaKk6G0 ――20XX年 空を見上げたら太陽が2つあった――と言えば過去の人達は果たして信じたでしょうか。 2つめの太陽ができるという予言じみた観測結果は、すでに数十年前に報告が出されていましたが、 世間は半信半疑で、実際に見るまでは誰もがジョークだと考えていました。 しかし、実際に太陽ができてしまった、つまり超新星爆発が起きてしまった後は大変な騒ぎでした。 多くのテレビ局で連日特番が組まれました。 それでも、しばらくすると空に太陽が2つあることは当たり前で、いまや面白いことではなくなってしまいました。 そして気づけば、世間の関心はべつの話題へと移っていきました。 皆さんはお気づきでしょうか。今朝方、人知れずに2つめの太陽の輝き――厳密には超新星爆発の光り――は失われていたのです。 おそらく、皆さんは気にも留めないかもしれません。 しかし科学の歴史は、今日という日を後々まで忘れることはないでしょう……。 プツン―― 2: ◆7chPYS4ayA 2016/05/22(日) 21:34:52.57 ID:ZGeaKk6G0 とある夏休みの一日。何度寝かの後、ふと目が覚め、私は起き上がりました。 長い髪をかき上げ、頭をぽりぽりとかいて時計を見ると、朝の11時。ちょうどいい時間です。 遅い朝食をとりにリビングへと下りていきます。センサーが反応して扉が開くと、奥の方からテレビの音が聞こえてきました。 どうやらつけっぱなしのようです。恐らくお父さんのせいだな。 テレビではご意見番らしき専門家が、超新星なんたらが輝きを失い、ブラックホールへ変わるだろうと説明しています。太陽が一つに戻ったとのことでした。 ――そういえば、確かに暑くないかも。ためしに家のカーテンを開けてみます。 嘘です、めっちゃ暑いです。昨日と変わらない暑さに辟易して、私はカーテンを閉めて熱気が入ってくるのを防ぎます。 これはしょうがないですね。こう暑い日は、家でごろごろしてるに限ります。 超新星なんたらを観測する科学者だって、クーラーの効いた研究室でディスプレイ越しに観測している時代です。 つまり、朝から涼しい部屋にこもる私は、研究者たる素質を十二分に兼ね備えた金の卵、エリート女子高生なのです! 3: ◆7chPYS4ayA 2016/05/22(日) 21:35:38.84 ID:ZGeaKk6G0 なんて自分の未来に思いをはせながらブランチを謳歌していると、突如としてリビングの扉が開かれました。 現れしは私のお父さんです。起床してからだいぶ経つというのに、まだ眠そうな、腐った目をしています。これでも全盛期よりは輝きを取り戻しているらしいのですが。 比企谷娘(以下娘)「おはよー」 八幡父「……こんにちは。お前は相変わらずの起床時間だな」 娘「たっぷりと寝た結果です。寝不足はお肌の大敵ですから」 八幡父「夜更かしもな」 娘「してしまったものは仕方ないのです。だから弥縫策として遅起きでカバーしたのです」 八幡父「この減らず口、やはり育て方を間違えたか」 娘「お父さん譲りです。葉山のお父さんからそう言われたりしますし」 私がそういうと、お父さんは「またあいつか……」とぶつぶつと愚痴っています。相変わらず仲は良くないようです。 ふと、お父さんが思い出したかのように顔をあげました。 八幡父「そうだ。なぁ娘よ、今日こそお父さんとデートに――」 娘「いきません」 4: ◆7chPYS4ayA 2016/05/22(日) 21:36:32.00 ID:ZGeaKk6G0 八幡父「お、お父さんが荷物持ちするから」 娘「それだったらお父さんよりアマゾンで頼むし」 八幡父「はぅっ……」 お父さんががっくりとうなだれる。 昔ならいざ知らず、娘の買い物に荷物持ちでついていこうなど考えが甘いです。今なら買ったその場で配送してくれるので、男手などいらんのです。おとといきやがれです。 娘「というよりも、今日は陽乃さんと会う約束をしてるのです」 八幡父「うげっ……」 娘「まぁたそんな反応する。お父さんほんとあの人が苦手ですね」 八幡父「学生時代、あの人にはよくおもちゃにされたからなぁ……。まぁ今となっちゃ懐かしい思い出だけど」 5: ◆7chPYS4ayA 2016/05/22(日) 21:37:10.41 ID:ZGeaKk6G0 娘「あ、そうなんですか? ならよかったらお父さんも――」 八幡父「いかねぇ」 娘「なんでそんな食い気味に」 八幡父「いいか。自然界には食物連鎖というのがあってだな。その最底辺にいるお父さんがあの人に会ったら命がヤバい。なんかもう超ヤバい」 娘「お父さん、焦りすぎて語彙力が小学生レベルになってるよ」 八幡父「まじかよ。これでもお父さん、高校時代は国語学年3位だったんだぞ」 娘「もう何十年も前の話でしょ。その自慢聞き飽きたし」 八幡父「おい聞き飽きたとか言うなよ。お父さんそれしか誇るとこないんだから」 娘「この数十年間なにしてたのさ……」 ピンポーン 娘「あ、陽乃さん来たみたい」 八幡父「え、うちに来るの? お父さん聞いてないぜ。まだ逃げる準備が――」 続きを読む