604: 大人の名無しさん ID:PQeHPMxB 昨日、親父の七回忌だった。 うちは本当に貧乏でさ、商売やってたんだけど、つぶれてシャッターがおりてる店がほとんどの寂れた商店街の隅っこに店があって、それでも「店で待っていてもお客は来ない」って両親は毎日毎日朝から晩まで注文取りに走り回ってた。 俺は五歳下の妹と二人兄弟で、小学生の頃からいつも二人で夕食を作って遅くまで両親の帰りを待ってた。 小学生の料理なんてうまいはずはないけれど、親父は「お前たちのカレーはすごくいい味だ」ってほめてくれた。 明るい家族だったから、貧乏でも楽しかった。 休みの日には、大きな鍋とインスタントラーメンを持って海に行って、たき火をしてラーメンを煮て食べた。 おいしかったなぁ。 小学校中学校と放課後友達と遊んだ記憶はほとんどない。 妹の面倒見なくちゃいけなかったし、家の手伝いもあったし。 高校受験の時にね、「こんな暮らしをしててもお前は貧乏から抜け出せない。家のことはいいからちゃんと大学出て、自分でやりたいことを見つけろ」って親父が言ってくれて、鹿児島の全寮制の高校に行かせてくれたんだ。 バイトはできなかったけど、運良く奨学金がもらえて仕送りなしで高校に通えた。 たまに帰省すると、その度にくしゃくしゃの千円札を母親に隠れて何枚か渡してくれて、「少しで悪いな」って。 そんな金使えないよな。 今でもしまってある。 35枚。 馬鹿なりに一生懸命勉強して東京の国立大に受かった。 ホントは受かっただけで満足だった。 でも、親父すごく喜んでさ「商売がんばってるから大学行ったら仕送りしてやれるぞ」って。 大学に入ってからはバイトバイトの毎日で、何とか授業料と生活費は自分で稼いだ。 大学でも寮に入れたから家賃は楽だった。 親からの仕送りは毎月三万円。 もったいなくて使えずに郵便局の仕送り口座にお金が貯まっていって、「好きに使っていいんだぞ」なんて手紙が来たりして。 そう言われると、苦労して送ってくれてるお金をそのままにしておくのも悪い気がして、毎月郵便局から引き出して、銀行の口座に移してた。 続きを読む