244: 中¥某 「私は日本へ帰ったと時、新彊偵察に同行した今田新太郎少将を訪ねた。すると彼は正直者だから、アメリカに頼んで私の命乞いをしようと思いついたらしい。キーナン検事の助言者となった某少将に、そのことを頼みに行った。 ところが、某少将は直ちにアメリカ側に密告して、『辻が帰った。あれは東條以上の戦犯だから捕まえろ』と。 それを聴いたのがオニール・フランク大佐という検事だが、言葉の途中で耳に蓋をして、『そんなことは聴きたくない。日本人が日本人を密告するとは何事か、僕が辻だったら、同じ行動をとったろう』と言ったそうである。 このことはずっと後になってわかった。二十六年八月、私が悪質の胃潰瘍で日赤病院に入り重態に陥ったころ、突然知らぬアメリカ人の見舞いを受けた。その米人はていねいに見舞ってくれた後、当時の真相を話して去った。 続きを読む