転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1547567836/ 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/16(水) 00:57:16.92 ID:M4jexkrI0 人が死ぬ話です 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/16(水) 00:58:36.48 ID:M4jexkrI0 「俺が思うに生まれ変わりだとかなんだっていう迷信は救われなかった人とか報われなかった人とかが期待を込めて願うものだから、もしも宝くじが当たれば、ギャンブルで大勝ちすれば、なんていう風に一発逆転を本気で夢見るみたいな――」 と、そんなことを友人らしき男性と話をしながら、宗教関係の本棚の前を歩く男性が目に付いた。 「でもさ、因果応報って言うし、今この人生で善いことをしたら来世では報われるとかそういう考えって悪くないと僕は思う。この前読んだ本でもそんな感じのこと書いてあったし……ああでもこれはどっかの国の死生観なのかな――」 静かな店内に遠慮がちに言葉が響く。それを右から左に聞き流しながら、私は本の陳列の整理を行う。店長に頼まれた仕事だった。 「まあそんな話はどうでもいいから、とりあえずこの本を読め。面白いから」 「いやだから僕はそういう話は嫌いなんだって」 「大丈夫だって。あれな、特別な料理を食べる話は大筋の短編の一つで……」 「もうその話は何回も聞いたわ。何でもない短編集読んでたら急にゲテモノ食いの話が出てきた時の僕の気持ちが分かるか? いや、分かるまい」 それが終わりそうなころ、男性二人組はそんな話をしながら漫画のコーナーへ足を進めていった。声が遠のいて、次第に会話の内容も聞こえなくなる。 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/16(水) 00:59:19.72 ID:M4jexkrI0 「氷川さん」と、代わりに私を呼びかける声が響く。そちらへ視線を巡らせると、三十代半ばの男性……この書店の店長が、いつものように何も考えていないような顔で立っていた。 「はい。……ああ、もう上がりの時間ですか」 「そうです。もう陳列は終わりそう……ですね」 「ええ。では、これを片付けたら上がります」 「はい。お疲れさまでした」 「お疲れさまです」 店長はゆったりと頷き、あまり抑揚のない声で労いの言葉を吐き出す。私もそれに相づちを返してから、目の前の作業を片付けて事務所へ向かった。 続きを読む