転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1420908410/ 1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/01/11(日) 01:46:50 ID:IUJxwGqQ 僕の名前は、濡古田(ぬこた)四小太郎(しこたろう)。 昨年大学を卒業し、仕方なくブラック企業で働き始めた今年24歳になるチェリーボーイである。 仕方なくというのは、元々労働なんてクソ食らえだし、実家で生活する手前、親がうるさいからだ。 もし、僕に十分な資産があり一人暮らしをしていたなら、仕事なぞするはずもない。 嫌々ながら通勤し、手当てもつかないのにサービス残業をする日々に、僕はうんざりしていた。 普通、残業手当がつかないなら転職を考えるものだが、僕にとっては、そんな思考すらありえないのだ。 もちろん、こんなブラック企業は今すぐにでもやめたいのであるが、今の会社を辞めて他に就職するなどもってのほか。 今の会社が、僕の最初で最後の職場であり、そこを辞めたらもう二度とフルタイムの仕事なぞする気にはならないのである。 労働とは、あの憎むべきBOW氏と同じくらいに、僕が最も忌み嫌っているものの一つなのだ。 そんなうんざりする日々の中、僕を癒してくれるものは深夜アニメだけである。 クソつまらないアニメの中から、かわいいズリネタを探し、シコシコするのは至上の喜びである。 特に幼い女の子が僕の大好物だ。 ライフークのニコ生で、よくロリコンなどとリスナーに言われて不本意なのであるが、確かに認めざるえまい。 3次元成人ビッチ女など、2次元生娘(きむすめ)美少女には比べるべくもない。 2次元こそが至高であり、そこが僕のパラダイスなのだ。 2次元美少女がこの世界のどこにも存在せず、ただの画像情報だということは目を伏せたまま気にもしない。 そんなことを気にしていては、僕が目指す理想郷にはたどり着けない。 だが、そんなささやかな至福の時間さえ、忌々(いまいま)しい労働が蝕(むしば)み始めている。 出社時間の都合で深夜アニメを見逃すなど、意地でもしたくないのだが、最近はそうも言っておられなくなってきた。 睡眠不足で集中力を欠いていると、ただでさえ不快な労働中に、 上司や同僚から、さらに不快になるような嫌味を言われるからだ。 そんなときは決まって会社のトイレにこもってスマホで2chを荒らすのだ。 この憎たらしい労働は、僕の唯一のやすらぎさえ奪おうというのか。 いい加減我慢の限界である。 2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/01/11(日) 01:47:46 ID:IUJxwGqQ そんな折、両親が田舎の本家に帰ろうと言い出した。 せっかくの貴重な休日を侵(おか)す気か?勘弁してくれ、と思ったが、 どうやら、体調思わしくない田舎の爺さんが生前(せいぜん)の財産分与をするらしい。 無論、孫の僕にすぐ関係する話ではないが、僕の両親の取り分が多くなれば、 必然的に僕の相続が増え大勝利もありえる。 仮に一億も相続できれば、質素な生活を心がけている僕の一生はもう安泰だ。 まあ、そこまでの大金を期待しているわけではないが、 相続額によっては今の生き地獄から開放される希望も見えて来る。 親戚に会うのは全く気のすすまないことではあるが、今回はカネのために行くことにした。 僕の本家は人里離れたというほどではないが、四方山に囲まれたかなりの田舎で コンビニやスーパーに行こうと思ったら、数キロは歩かなければならないほどの 暮らすには自動車必須の不便なところである。 鉄道好きな都会っ子の僕にとっては、場所柄(ばしょがら)からして性(しょう)に合わない。 とはいえ、田舎の空気は意外とおいしく感じるので、安い物件があれば、 こういう田舎でのニート生活も悪くないなと思うのであった。 さてさて肝心な僕の財産はどうなることやら。 残念ながら、僕は調子の悪い爺さんのお見舞いに来ただけという体(てい)なので、 相続に関する話合いからは自然に締め出されてしまった。 まあいっかと思いながら、スマホをいじって2chを荒らしているうちに話し合いが済んだようだ。 父の話によると、すぐ近くの山ひとつが父の相続分になるらしい。 え?山って高くないよな?しかも、こんなド田舎の山は。マツタケでも取れたら別なのかな? と思いながら、詳しく父に聞いてみると、 どうも資産価値でいえば、200万になるかならないか程度のようで、とんだ期待はずれだった。 ちっくしょう、200万ぽっちじゃ3年ニート生活できねえよ!と心の中で叫び地団太を踏んだ。 この結果にムカムカして、さっさと帰って録画がたまっているアニメでも消化したかったが、 両親はもうしばらくここにいるということで、 車で一緒に来たため、僕だけ帰れるはずもなく、またもや手持ち無沙汰になってしまった。 もう今日はいい加減レスのつかないスレを荒らすのも飽きてきたので、 父に相続されるという山の場所を聞き一人で見に行ってみることにした。 3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/01/11(日) 01:49:02 ID:IUJxwGqQ 歩くこと十数分、その山は資産価値200万程度にしては随分大きく見えた。 へえ、これだけでかくて木が生(お)い茂ってれば、200万以上ってのも、もしかしてあるんじゃないか。 万が一の期待をかけて僕は自分で山の価値を見極めたい興味にかられ、山道の入り口を探した。 ところが、ある程度山を周回してもこれが見当たらない。 らちが明かないので、歩けそうな場所から強引に山に入ってみることにした。 足場はととのっていないが、まあ、登れないこともない。 と、目を山頂の方に向けた、そのとき、木々の合間に白っぽい服を着た人影が見えた。 一瞬ギョッとして立ちすくんでしまったが、目をよくこらすと子供のようだ。 この場所からは後ろ姿しか見えないが、しかも、年端も行かない女の子であると僕の本能は直感した。 ニヤリッ、邪悪な笑みが僕のお世辞にも整っていない顔に浮かぶ。 ・・・この山は僕のいずれ相続する場所。 つまりここに勝手に立ち入るってことがどういうことか、 少しお仕置きしてやらなきゃなりませんねえ。ドゥフフ・・・ そう考えるだけ考えたけど、結局犯罪者になりたくない僕はそのまま立ち尽くしていた。 そもそもコミュ障の僕は子供にさえ、自分から話しかけるようなことはできない。 まして脅すなど そんなことを考えていたのも束の間、その子は林の中にどんどん分け入って進んでいく・・・ え?こんな足場の悪い道もない山を登るのか?ちっとやばいだろ さすがに直前にしていた不謹慎な妄想に関係なく、 少なくとも危険だと注意すべきだという使命に駆られ、僕はその子の後を追った。 その場で大声で声をかければ済む話なのだが、そんなこと出来りゃコミュ障なんてやってねえよ。 相手がこっちに気づく距離まで近づいて、僕の存在を認知してもらってから始めて声をかけられるんだ・・・ 4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/01/11(日) 01:50:12 ID:IUJxwGqQ しかし、どうしたことだ。 大人のこの僕が一歩一歩足場を確かめて進まざるえない山道をあの子はなんなく登っていくではないか。 僕が悪い足場に四苦八苦している間に、その子は林の奥へ消えていった。 子供の姿が見えなくなって僕は立ち止まりしばらく考えた。 薄々感じてはいたが、もしかして、いや、もしかしなくても、あの子が人間ではないのではないかという予感。 そういったものに怖いもの見たさで興味はあったが、いざ実際体験してみると背筋に寒いものが走った。 やめるか・・・ そう、僕は実にあきらめのいい面倒くさがりであるという長所もあるのだ。 ニコ生でリスナーからすすめられることを「今度やってみましょうかねえ」とか 「あとで見ておきましょうかねえ」とよく言うがやったためしがないし、やる気もない。 人間じゃなかったら怖いし、人間であってもどこの誰ともわからない子に注意するためだけに、これ以上骨を折るのは割に合わない。 そもそも後姿しか見ていないから、あの子がかわいければいいが、 3次など、ろくでもないのは火を見るより明らかである。 そのろくでもない結末を目(ま)の当たりにしないうちに引き返したほうが、 後姿(うしろすがた)から妄想を膨らませてシコれるというものだ。 帰ろう、そう思って振り返った瞬間、我ながら尋常ではない動揺が全身を駆け抜けた。 山のふもとが見えない?! この山に入って、たいして歩いた気がしないのに山のふもとの林の切れ目が影も形もない。 何かの勘違いに違いないと思い、急いで悪い足場をもたつきながらも、登ってきたと思われる道なき道を戻った。 つもりで歩いたのだが、果たして僕は自分が山を降りているのかわからなくなった。 降りるつもりで歩いていたが、もはや下に向かって歩いてはいないようだった。 林の奥に見えるのは林、また林。 マジかよ・・・ ここに至って、自分がやっかいなことに足をつっこんでしまったのだとようやく自覚した。 クッソッ、こんなことなら大人しく2chでも荒らしておくんだった、と考え、ハッと気づいた。 そうだよ、スマホがあるんだから、いざとなったら、親に連絡つくし、そんな酷い状況でもないな、 と楽観的に思いなおしポケットからスマホを出して見て絶望した。 バッテリー切れとかありえん・・・ 続きを読む