転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526648499/ 1: ◆hs5MwVGbLE 2018/05/18(金) 22:01:39.51 ID:axZJXWW20 城の遣い「王がお待ちだ。入れ」 ナブ「……はい」 今わたしがいる場所。ここは争いごとを好まない平和な平和なある一国のお城。 大きな扉の前でわたしは黄金の取っ手を掴んだ。中では王様が待っている。なぜ呼び出されたかは知っている。格好もそれらしく、小さな首輪に薄い布一枚だ。 わたしは、王様の子を授かるらしい。 SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1526648499 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 22:02:52.99 ID:axZJXWW20 …………………… 生まれつき多大なる魔力と魔法の才覚があったわたしは若くして上級魔法職に就任。 その才能と関係があるのかは分からないが身長は異常なまでに伸びなかった。だが恵まれた人生……そんなちっぽけなことはこれっぽっちも気にならなかった。 魔法使いとしてこの国の魔法技術の発展に協力し、そこで稼いだお金でやっとお世話になった学校や孤児院にも恩返しができる。何もかもが上手くいっていた。 しかし3日前、わたしは上級魔法職のうさ耳族という理由だけで大勢の人の前で国から迫害を受けた。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 22:04:23.73 ID:axZJXWW20 審問官「上級魔法職、ナブ。異端亜人種として貴様の国民権を剥奪する」 ナブ「そんな! 何故ですか!?」 審問官「これも国民の平和のためだ。貴様はこの国の平和を脅かす脅威になり得るのだよ」 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 22:05:55.99 ID:axZJXWW20 ナブ「納得がいきません! 説明してください!」 審問官「……よかろう。我々ヒューマンが取り仕切る王政でありながら数ある亜人種にも寛大なのがこの国の特徴であり、その共存が平和の象徴でもある。何も貴様がうさ耳族というだけで我々は貴様を裁くのではない」 ナブ「なら!」 審問官「問題なのはその貴様の過ぎたる魔法の才覚とうさ耳族の繁殖力にある。もしもの話だ。この先貴様の子孫から強力な魔力を秘めたうさ耳族が増えすぎたらどうなるか? 賢い貴様ならわかるはずだ」 審問官「より力のないヒューマンはいつか淘汰され、この国は貴様らうさ耳族に乗っ取られてしまうだろう。ナブよ、後ろを見たまえ」 ナブ「え……」 5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/05/18(金) 22:07:06.90 ID:axZJXWW20 わたしはその景色が今でも忘れられない。 「たしかになー……」 「こえーよなー」 「噂によるとうさ耳族って年頃になるとすぐ発情して子どもつくりたがるんだろ?」 審問官「聞こえるだろう? 国民たちの不安の声が……これが大衆の意思なのだよ」 ナブ「……」 街中の目が一つとなってわたしを怯えた瞳に映す。わたしもまたその大きな大衆の眼に怯えた。何も言い返すこともできず。誰もわたしを庇ってくれない。同じ魔法学校で学んだ子たちすらわたしから目をそらした。その瞬間、優れた才能を初めて恨んだ。 魔法を学ぶことが楽しくて楽しくて仕方がなかったわたしには前しか見えておらず、後ろに置いてきたものの尊さを理解する頭がなかった。 続きを読む