転載元 : https://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1544605288/ 1 :◆ukgSfceGys 2018/12/12(水)18:01:28 ID:p73 速報が復帰しないのでまたこちらにお邪魔します。 モバマスSS、地の分形式。周子のスカウト話です。 次から投稿していきます。 2 :◆ukgSfceGys 2018/12/12(水)18:01:54 ID:p73 ========= 「Pさんはさ、あたしがアイドルになって嬉しい?」 「そりゃ嬉しいさ、周子ならすぐに売れるだろうからな。テレビ出演やCDデビューも夢じゃない。こんな金の卵を担当できるなんて嬉しい限りだ」 「そ。ならいいけど」 「頼んだぞ、事務所の運命はお前にかかっている」 「任せとき、後悔させてあげるよ」 私物を一つずつダンボールに詰めながら周子はそんなことを言う。 後悔させる? 後悔させないの間違いじゃないか? そう周子に問いかける。 「わかってないねー、Pさんはあたしにひどいことしたんだよ?」 そんな言葉に似合わず、顔は微笑みを浮かべてる周子。思わず惚れそうになる笑みを携えたまま周子はあっさりとこんな言葉を口にした。 「あたしがどんなに売れっ子アイドルになっても、もう結婚なんかしてあげないよ」 ========= 3 :◆ukgSfceGys 2018/12/12(水)18:02:20 ID:p73 ◆◇◆ ポーンポーンポーン 間の抜けたベルが小さな事務所の中で響き渡る。今日も定時を迎えたようだ。ガシャンとタイムカードを切り、帰る準備をし始める。 「お疲れ様でした、プロデューサーさん」 「お疲れ様でした、ちひろさん。もう上がりますね」 「お仕事の方は大丈夫ですか?」 「……まあ残業するほど仕事も無いですし……」 言ってから気づく。もっとマシな言い方があっただろうに。 「あ……それは失礼しました……。ごめんなさい、そんな事を言わせてしまって……」 やはりちひろさんが恐縮してしまったようだ。これはこちらの落ち度だ。ちひろさんが謝ることなんて何一つないのに。 雰囲気を変えるべく、なるべく明るく振る舞う。 4 :◆ukgSfceGys 2018/12/12(水)18:02:35 ID:p73 「いえ、いいんですよ。むしろ定時帰り出来るなんていったら多くのサラリーマンが泣いて喜びますよ!」 「定時帰りなんて、側からみたらホワイト企業なんでしょうけど……」 「まあ実際にはホワイトでもブラックでもなくレッド企業ですかね!」 「プロデューサーさん、して、その心は?」 「資金繰りが厳しくて月間赤字がチョコチョコ。事務所の存続にも赤ランプが灯ってる、みたいな!」 今の危機的状況を茶化して全力でボケる。辛い状況だからこそ笑いが必要だろう。 「全く絶滅危惧種じゃないんですから……。というか笑えないですよ、それ」 笑いが取れなかった。つらい……。というかマトモに受け取られてしまった……。 「まあ小さな事務所ですしねぇ……。先輩も後輩君も、勿論俺も頑張ってはいますけど、なかなか結果がねぇ……」 「プロデューサーさん達の頑張りには本当に頭が下がります」 そう言って本当に頭を下げそうな声色で感謝してくれるちひろさん。こういう人が支えてくれるから俺たちは苦しい中でも頑張っていけるんだろうな。 5 :◆ukgSfceGys 2018/12/12(水)18:02:54 ID:p73 「そういや社長が何か色々と策を練ってるらしいですよ」 「え? そうなんですか? 初めて聞きましたよ、それ。ちひろさん何かご存知なんですか?」 「いえ詳しいことは何も……。どうやら我々にも秘密で、単独で動かれてるそうです。最近お出かけになることが多いのもそれのためかと……」 「……一発逆転の策になればいいんですがねぇ」 ポーン、ポーン、ポーン またベルが鳴る。定時後の休憩が終わった事を教えてくれたようだ。 ちひろさんとのおしゃべりは楽しいが、長居も無用なのでさっさと帰るとしよう。 「ではちひろさん、お先に失礼しますね」 「お疲れ様です。私もこれを片付けたらすぐに帰りますね」 「そうですか。では戸締りはお任せします」 「承知しました。プロデューサーさんも帰り道にお気をつけてくださいね?」 6 :◆ukgSfceGys 2018/12/12(水)18:03:26 ID:p73 そう一通りの挨拶をして事務所のドアを開ける。そういや帰り道に気をつけると言っても、一体何に気をつけたらいいのだろうか? 交通事故? 誰かに絡まれて喧嘩? ぼったくりバー? 美人局とかなら一度会ってみたいものだけどな。当然その後は怖いけど。 まあいい、折角の定時上がりだ。このまま一人暮らしの家に帰るのも寂しいものだし、どこか寄り道でもしていきますか。 続きを読む