転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503757236/ 1: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:20:36.88 ID:aMqWbp8N0 地の文注意。 やや閲覧注意。 2: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:23:15.09 ID:aMqWbp8N0 アイドルってなんでしょうか。 ナナはずっとずっと考えていました。 ブラウン管の小さい画面に映る彼女らはナナにとってとても眩しいものに思えました。 薄汚れている現実世界に光を授ける天使たち。 今思うと美化しすぎかもしれません。 それでも、ナナにとっては、当時のナナにとっては。 本当にかけがえのない素敵な存在だったんです。 3: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:24:55.11 ID:aMqWbp8N0 「すみません。安部には私の方からも言っておきますので」 「あぁ、いいよいいよ。ウサミンにはパワーがいるからね。そういう時だってあるさ」 「本当に申し訳ございません!」 今日はバラエティ番組の収録でした。 スタジオでVTRを見てそれについて感想を言い合う時のことです。 普段はワイプに抜かれていることを意識していろんな表情を作るのですが、最近全然うまくできなくて。 それを強く自覚したのは一週間前くらいの放送を見た時でした。 テレビ画面に映るナナの表情はどれも嘘っぽくて、ぎこちなくて、不自然でした。 ナナは嘘をついています。 仕事なら嘘の表情だって作らなきゃいけません。 それが……作れなくなってしまいました。 ペコペコと頭をさげるプロデューサーの背中を見ながら、ナナはぼんやりと考えていました。 この人に、こんなことをさせたかったはずじゃないのに。 ウサミンの看板は、いつからかナナに重くのしかかるようになっていました。 4: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:31:16.59 ID:aMqWbp8N0 このプロダクションに拾ってもらって数年が経ちました。 敵情視察と生活費の工面の意味合いでウェイトレスとして面接を受けたのですが、 いつのまにかアイドルの面接へと変わっていました。 厳密に言うとプロデューサーさんに引き抜かれただけなので形ばかりの面接でしたが。 路上でセルフプロデュースしていた時や、他事務所の面接でアピールした時に散々笑われたナナのキャラに真剣に付き合ってくれたのが彼でした。 もともと選べる立場ではありませんでしたが、それでもこの人についていこうと決心したことは確かです。 ココロって、目に見えないからこそキレイだと思うんですが、この時ばかりははっきりと見えたんです。 この人は絶対に裏切らないっていうキモチと、ナナ自身が彼についていきたいって言うキモチが。 思えばそこからボタンは掛け違っていたのかもしれませんね。 自分自身の気持ちを見誤っていたんですから。 こんなことになるくらいなら、ナナは一生埋もれたままでよかったのかもしれません。 ナナは自分で自分の夢を踏みにじりました。 続きを読む