転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1544457161/ 1 : ◆TOYOUsnVr. 2018/12/11(火) 00:52:42.36 ID:8Cb0VKxR0 音量をできるだけ絞った、控えめなアラームが私を起こす。 徐々に覚醒していく意識で、それを止めて時計を見やる。 午前四時前、外はまだ暗い。 自室はまるで冷蔵庫の中みたいで、掛布団を捲ることがすごくすごく躊躇われたけれど、起きなくては。 意を決して体を起こす。 途端に冬の朝が猛威を振るい、私を襲う。 もう一度布団にくるまって、二度寝をしたい気持ちをぐっと堪えて、ベッドから立ち上がった。 2 : ◆TOYOUsnVr. 2018/12/11(火) 00:53:29.96 ID:8Cb0VKxR0 ○ 足先の感覚を頼りに、スリッパを探す。 二度、三度と冷たい床に素足で触れて「ひゃっ」といった情けない声を上げかけたが、なんとか探し当てることに成功した。 ハンガーからカーディガンをひったくるようにして、着込む。 のそのそとした足取りで、階下へと向かった。 暖房のついていない一階は自室の比にならない程寒く、縮こまる。 そうしてキッチンから食パンを一枚取って、トースターへと押し込んでから洗面所へ。 顔を洗って、伸びをする。 さぁ、今日も頑張ろう。 自分に言い聞かすように呟くと、キッチンからの軽やかな金属音がパンが焼けたことを告げた。 3 : ◆TOYOUsnVr. 2018/12/11(火) 00:53:56.20 ID:8Cb0VKxR0 ○ トーストにバターとジャムを塗り、もそもそと食べていると、階段の方から小気味の良い音がゆったりとしたリズムで近付いてきた。 ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、というそれは爪とフローリングとが打ち合って奏でられるものだ。 そして、その主は、うちには一人しかいない。 ハナコだ。 ハナコは「今日も早いのね」とでも言いたげな顔で、とてとて私の隣の椅子へ飛び乗る。 頭を撫でてやると、目を細める仕草がいつもながら愛らしい。 「ご飯だよね。待っててね」 パンを食べる手を中断して、ハナコの餌皿へとドッグフードを注いでやる。 ハナコは餌皿の前でぶんぶん尻尾を振りながら、お利口に座って待っている。 そこへ「いいよ」と言ってやると、一心不乱に食べ始めた。 4 : ◆TOYOUsnVr. 2018/12/11(火) 00:54:30.18 ID:8Cb0VKxR0 ○ 私もハナコも朝食を終え、いつもよりかなり早い朝の散歩へと繰り出す。 まだ真っ暗な街は、近所なのにちょっとだけわくわくした。 これだけ朝早いと、すれ違う人もいない。 なんだか世界に私とハナコだけみたいだ、なんて有り得ない妄想を繰り広げながらのいつもの散歩道だった。 続きを読む