転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533267312/ 1: ◆wIGwbeMIJg 2018/08/03(金) 12:35:13.06 ID:gfGSaD+l0 何処までも対等だと信じていた友達に劣等感を抱き始めたのはいつからだっただろう。 「東京から転校してきた大野けんいちです。」 まだこのこの学校の制服を持っていないという大野の身を包んでいた紺色の制服が、この田舎の中学校には不相応すぎて、変に浮いていたのを覚えている。 大野「杉山!」 杉山「大野!お前なんで…!」 HRが終わってすぐさま、俺の席に駆け寄ってきた大野を見て、椅子がはじけるほど思いっきり席を立ってしまった。 身長も伸びてるし、声変わりもしている。 でも大野は何年越しに見てもやっぱり大野のままで。 変わらない親友の姿を突然目の当たりにして俺は胸が詰まるほど嬉しかった。 大野「俺、この秋からまたこっちの学校通えるようになってさ」 杉山「なんで先に言わねえんだよ!言ってくれれば駅まで迎えに行ったのに! 2: ◆wIGwbeMIJg 2018/08/03(金) 12:38:34.49 ID:GdHGw1+H0 大野「驚かせたかったんだ、まさか同じクラスになれるとは思ってなかったんだけど」 杉山「めっちゃ驚いたわ!また大野と同じ学校に通えるなんて…」 大野「おいおい、いい年して泣くなよ」 杉山「泣っ、泣いてねーよ馬鹿」 大野「はは!」 ポンポンと肩を叩いてきた大野の手が大きくなってることに気が付く。 成長期の真っ只中だ。当たり前だろう。 でも俺は無意識にごくたまに届く近況報告の手紙の奥に、いつも小学生の姿のままの大野を見ていた。 突然こうして成長した姿で再開して嬉しい半面、今までは昨日のように思い返されていた思い出もどこか遠くに見えるようになってしまった。 「やば、超かっこいい…」 ふと背後に、そんな息をのむような女子のつぶやきを聞く。 「東京から来たんでしょ?あの制服どこのだろ」 「杉山君の知り合いなんだ」 目の前のこの硬派な男がまたしてもこうして女子の間で話題になってるところも昔と何も変わらなくて、なんだか笑えてきた。 杉山「早速話題になってるじゃねえか」 大野「転校生なんて誰だってそんなもんだろ?」 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/08/03(金) 12:40:13.31 ID:GdHGw1+H0 そう大野は何でもないように笑って見せたが、転校生、確実に大野はそれだけじゃなかった。 男の俺からみても大野は男前だ。 髪の毛は真っ黒でサラついてるし、背は高く(同じくらいだけど)スタイルもいい。 転校生というのは、女子の目を嫌味なほど引く大野という男を構成する要素の一因にしかすぎなかった。 大野「お前サッカー部入ったんだろ?俺も入るよ。」 杉山「ほんとか!?でも大野、東京でサッカー部入ってなかったんだろ?」 大野「お前いないのにサッカーなんてする気になるかよ」 杉山「キモイこというなよ~。じゃあ東京でお前、何してたんだ?」 大野「んー…。実はさ、俺向こうに行ってから宇宙に興味持ち始めて。それに関して色々…な。」 大野はほんの、ほんの少しだけ照れを孕んだ声で、それでいてまっすぐこっちを見てそう言った。 杉山「へえ、船はもういいの?」 大野「海もロマンあるし好きなことには変わりないけど。宇宙って海より気が遠くなるほど広いんだぜ?なんかさ、いいだろ。」 杉山「うーん、でも宇宙って遠すぎて逆に意識できないんだよなぁ。」 大野「お前にもいつか教えてやるよ。…宇宙のロマン。」 そういって大野は窓の外を向いた。 サッカーボールが転がってる校庭なんかよりもずっとずっと上の空を見上げていた。 そん時あの頃はいつも同じもの追っかけてたのになぁと、ぼんやり考えた気がする。 大野は途中からサッカー部に入ってきたにも拘わらず、俺以外の誰よりもサッカーが上手かった。 期待を裏切らない大野の姿に俺は高翌揚感を覚えた。 途中から惰性になっていた部での活動が大野のおかげで日々の楽しみに変わった。 俺はそれがたまらなく嬉しかったし、負けないように練習を積み重ねていった。 続きを読む