転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493372767/ 1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 18:46:08.07 ID:XmTt3q8L0 雨が、残酷な音を叩きつけていた。 2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 18:46:50.49 ID:XmTt3q8L0 ――まえがき―― レンアイカフェテラスシリーズ第49話です。お花見編完結。 以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。 ・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」 ・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」 ・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」 ・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」 ~中略~ ・北条加蓮「……」高森藍子「……加蓮ちゃんと、桜の日の夜に」 ・北条加蓮「藍子と」高森藍子「静かな部屋で」 ・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「薄明るい自室で」 ・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「過ぎた後のカフェテラスで」 いつもの2.7倍くらいあります。ゆっくりとお読みくださいませ。 3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 18:47:20.51 ID:XmTt3q8L0 「………………っ……」 玄関先で藍子が立ち竦んでいる。 ライトグリーンのデニムジャケットは、袖の部分が少しだけくしゃりとなっている。桜の日の夜に泣きはらした時と同じように。 藍子は何も言わなかった。 右手でフレアスカートを、もう片方の手でネイビーの傘を強く握りしめ、唇を震わせているばかりだった。 だから私はおどけて笑った。 「何いきなり泣きそうな顔してんのよー」 数秒待ってから。 だって……、と、掠れた声。 「天気予報がちょっと外れただけでしょ? いくら完璧な予報でも、数日経てば変わる時だってあるよ」 「……でも」 「てか実際この前そうだったじゃん。当たらないねー、って笑いあったでしょ? もう忘れちゃった?」 「……わすれて、ないですよ」 天気予報がちょっと外れただけ。 生きていればいくらでも起こり得る出来事だ。 そう言い飛ばそうとして、思い出す。 "起こり得る出来事"のせいで今のぎくしゃくした状態が生まれたんだっけ、私達。 4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 18:47:50.22 ID:XmTt3q8L0 とどめの代わりに、手を伸ばした。 藍子の左手がすごく痛そうに見えた。傘の柄を強く握りしめすぎていて、爪が掌にまで食い込んでるもん。 だから、ばっ、とこじ開けて、力が戻る前に無理矢理に指を絡めて、ぐい、と引き込む。 藍子が少しだけ転びそうになったけどなんとか踏ん張っていた。体勢を立て直したのを見て、繋いだ手を上げて見せて。 「ほら、行こ?」 「え――」 「雨の中のお散歩ってなんかカッコよくない? 風流っていうか、大人っぽいっていうか? 藍子はそういうの、嫌い?」 「……嫌いじゃないです……。いつもなら、嫌いじゃないです……でも、」 「嫌いじゃないんだよね。じゃあいいじゃん。行こうよ!」 言葉よりも行動だ。 あぁでも何も考えないで飛び出すのもプライドが許してくれない。 今着てるのは……グレーのトレンチコート程度だけどこれでいいや。バッグだけ急いで取ってこよう。 レインブーツは……あった。スニーカーっぽいヤツ。誰かさんのお話につられてぶらっと靴屋に行っといてよかった。 傘はこの辺から、適当に引っこ抜いて。 ……いや、藍子がらしくもなく大人びた傘を持ってきてるから私は明るめで行こう。 グレイのは戻しておいて、前にお母さんが買ってきてた純白の傘を手に取る。 ちょっと白すぎるけど、たまにはいいよね。 雨の日コーデは5秒で完成した。 こういうのは速さが勝負。 でも、と、だけど、を繰り返す前に、さっさと飛び出してしまおう。 5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/28(金) 18:48:20.53 ID:XmTt3q8L0 手を繋いだまま、行こ? と繰り返した。 藍子は微かに頷く。2歩3歩と進んだところで、傘で目元を隠した。 この時点で確信した。きっと今日という日は悲しい思い出となる。 2人で笑っての円満解決になんてならない。楽しかったね、で終わる話には絶対にならない。 それでいい。 この雨のようにジメジメと引きずるよりは、何倍もいいに決まってる。 だからせめて、「今日が無ければよかった」と思うことだけはないように。 続きを読む