転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1542545689/ 1: ◆V1gN/9sbLo 2018/11/18(日) 21:54:49.80 ID:878XYWmy0 デレマス二次創作です。 色々よろしくお願いします 2: ◆V1gN/9sbLo 2018/11/18(日) 22:00:42.73 ID:878XYWmy0 その日は最悪な一日だった。 それをなんとなく肉体が察したのか、それとも運命を知っていたのか――やけに青ざめた俺の表情を察して、千川さんが話しかけてきた。 「なんだか顔色悪いですね、塩崎さん。そんなに嫌なんですか?」 「うーん、ま、嫌ってわけじゃないんですけど……なんだか苦手ですね」 「それ、嫌ってのと違うんですか?」 「若干ですけど、違いますね」 「へぇ?」 「ともかく、行ってきます」 「はい。頑張ってくださいね。はいこれ、今日の資料です」 3: ◆V1gN/9sbLo 2018/11/18(日) 22:03:24.37 ID:878XYWmy0 その日は、俺の二回目のオーディション担当の日だった。 我らが美城プロダクションには二種類のアイドルスカウト方法があり、直接プロデューサーがアイドルを探しに行くスカウト形式か、もしくはアイドルが受けに来るカタチのオーディション形式の二通りであった。 オーディションでは主に書類審査や面接などが行われ、現状美城プロダクションに足りない属性を持ったアイドルの原石を探すことがメインとされる。スカウトではプロデューサー自身の直感が試されることに対し、オーディションではプロデューサーの審美眼が試される。 実際のところ、俺は審美眼を有しているとは言い難いのだが……しかし、わざわざ女一人探すために他県に出張したり、口説き落としたりすることを苦手に感じているため、自ら辞退させてもらっていた。が、だったらオーディションを担当してもらおう、という部長の指令により、俺はオーディションを担当させられてしまっていた。 曰く、「やらなかった後悔はやった後悔よりも重く、そして後悔そのものは人生における最重量の重りだ」という。 4: ◆V1gN/9sbLo 2018/11/18(日) 22:04:12.12 ID:878XYWmy0 そもそも俺は女性が苦手である。 無論同性愛者の類ではない。ただ、なんとなく若い女子に対しての後ろめたさにも似た苦手意識のようなものが、染みついているのである。あのなんとも言えない女性特有の雰囲気というのがどうにも苦手で、敬遠しているわけだ。 オーディション部屋に入れば、そこには予め一つの長椅子と二つの椅子、それに対するように小さなパイプ椅子がちょこんと置かれている。扉は今入ってきた一か所しかなく、どこか密閉された空間のように感じる。窓は左手に大きなものが一枚あるが、あいにくと本日は曇天。なんとも言えない雰囲気である。 まさに“如何にも”という感じだ。 「はぁ……」 とため息を零す。 5: ◆V1gN/9sbLo 2018/11/18(日) 22:04:46.16 ID:878XYWmy0 「あらま、そんなに落ち込んでいたんじゃ大変ですよ」 「ぅおあ、千川さん!?」 俺の後ろを陣取るように、音もなく千川さんが現れた。 「今回のオーディションは私も手伝えということでしてね。塩崎さん、この前全員落としちゃったでしょ。部長も困ってましたよ」 「はぁ、だったら、他の人にやらせればいいのに……そもそも、アイドルの発掘なんて、俺には無理なんですよ」 「まあまあそう言わず。部長だって、考えなしにあなたを起用したわけではないでしょうからね」 「そうなんですかね?」 「まあそういうことにしてみたら、いかがでしょうか?」 「精神論……」 続きを読む