転載元 : http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1542524740/ 1: ◆TDtVvkz8pSL3 2018/11/18(日)16:05:40 ID:LoV 二宮飛鳥のスカウト話です。 おーぷんの方で立てるのは初めてなのでミス等あるかもしれませんがご了承下さい。 2: ◆TDtVvkz8pSL3 2018/11/18(日)16:06:24 ID:LoV ボクは、独りだった。 今日この日が来るまでは。 何故そうなのかも理解っていたし、それを善しとしていた。 その時、彼に出逢うまでは。 3: ◆TDtVvkz8pSL3 2018/11/18(日)16:06:56 ID:LoV 『ほら見て、二宮のやつまた一人で窓の外見てる』 『タソガレルってヤツ?かっこいいとでも思ってんの?』 『意味ワカンねー』 教室の対岸から、敢えて此方に辛うじて聞こえるかどうかという程度の話し声が届く。 いつものことだ。 興味も無い。その声も何処か靄がかっているようにすら聞こえる。 気にかける程の価値も無い、戯言。 それに、異端であるのはボクの方なのだから。 『またあんなこと言って……二宮さん、気にしないでいいからね!』 隣から、義憤の声が届く。 それもまた、ボクにとっては大した価値を持たなかった。 彼女はボクではなく、二宮飛鳥と言う名の勝手な偶像に憧れているのだから。 4: ◆TDtVvkz8pSL3 2018/11/18(日)16:07:25 ID:LoV 後ろ指を指し嘲笑う者。 謎の崇拝を眼差す者。 無関心を貫く者。 この部屋にいる者の態度は様々で、一様だ。 誰もが遠巻きにボク──否、ボクを象る事象の地平を眺めている。 誰一人として、ボク自身を見ることもなく。 ボクもまた、そうであること望んでいる。 今更、此処に何かを求める心算(つもり)も無い。 ボクは独りだった。 5: ◆TDtVvkz8pSL3 2018/11/18(日)16:07:56 ID:LoV 「もしこれが戯曲なら、なんてひどいストーリーだろう」 チャイムと共に用の無くなった顔の亡いショーウィンドウを一番に抜け出して、足早に小高い丘の上にひっそりと拓かれた馴染みの公園へ向かい、ジャングルジムの頂に座す。 此処からは木々の向こうに遠く街並みが広がっているのが一望できる。 嗚呼、正に御山の大将と言ったところか。 口許に自嘲的な笑みが歪んだ。 「進むことも戻ることもできずに、ただひとり舞台に立っているだけなのだから」 徒らに口遊みながら、麓の自販機で買った缶のプルタブを起こす。 日はとうに暮れているが、時刻はまだ17時を回った辺り。 学校ではまだ、部活動に勤しむ生徒達が笑いあっている頃だろう。 真冬の冷たい風が吹き抜ける。 いつもの黒々とした珈琲は、いつものように、いつもよりも苦々しく思えた。 続きを読む