転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1464418942/ 1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/28(土) 16:02:22 ID:JFJ3Fhmg "拝啓。少女ちゃんへ。 私が引っ越してから随分と時間が流れました。 随分と、とは書きましたけどそっちでの生活もあんまり昔だって気もしなくて、昔だったような、最近だったような、そんな不思議な感じです。 最近、なんとなくそちらでの生活を思い出すことが多くて、今こんな手紙を書いています。ちゃんと届くといいんだけど。 そちらの生活は楽しいですか? 昔は少女ちゃん、どこにも居場所がないんだーって顔してたよね。 もうそっちに住んでないわたしが言うのも変だけれど、少女ちゃんが地元を少しでも好きになっていてくれたら嬉しいです。 そろそろ祭なのかな。少女ちゃんと石段の上から見た花火は今でも覚えています。 まだあの場所は穴場スポットのままなのかな? あ、穴場スポットといえば友ちゃんに………… ………… ……… …… … 2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/28(土) 16:07:34 ID:JFJ3Fhmg そんな手紙が届いたのが、一週間ほど前のことでした。 小学生の頃、仲のよかった同級生の女の子からでした。 一番仲が良かった友達だったのですが、私は何故か、その手紙に対して、どう返せばいいのか戸惑ってしまったのです。 『私は楽しいよ!また遊ぼうね!』 ……数年ぶりの返事がそんな軽い感じでいいのかな? 『久しぶり、こっちは楽しいよ!そっちはどう?』 ……いやでもすごく深刻な悩みを抱えてる場合もあるよね。聞いていいものなのかな? ………… 少し考えて、私はひとつの結論に達しました。 そうして、筆をひとまず置くことにしたのです。 3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/28(土) 16:12:01 ID:JFJ3Fhmg 友「へ?幼馴染ちゃん?」 夏休み半ば。私の所属する吹奏楽部の友人である友ちゃん。 小中高と同じ学校であることもあるのか、数少ない親密な友人の一人です。 ……友人が少ないのはここだけの話です。 少女「うん、幼馴染ちゃん。覚えてる?」 友「覚えてる覚えてる。なんだか大人っぽい子だったよねー」 大人っぽい子。確かにそうです。 だからこそ、私にはなにか引っ掛かるものがあったのかもしれません。 友「幼馴染ちゃんがどうかしたの?」 少女「う、ううん。なんとなく思い出しただけ」 私は何故か手紙のことが言えませんでした。 4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/05/28(土) 16:19:17 ID:JFJ3Fhmg ………… ミーンミーンミーン 夏。夏です。部活帰り。今日は午前だけの練習でしたので、昼過ぎのこと。 蝉のけたたましい鳴き声から"蝉時雨"ってこういうもののことなんだろうなぁなんてぼーっと考えながら、帰り道にある駄菓子屋のベンチでガリ○リ君をがりがりと食べます。 きーんってしますけど、ガリガリ君はやっぱりガリガリと食べてあげるべきなのです。舐めるのは邪道です。 友「……なんか悩んでるでしょ」 少女「うっ」ギクリ 思わず声が出ました。ぎくり、という音が全身から漏れだした気がします。 ミーンミーンミーン…… みーん。みーん。頭のなかをぐるぐる。ぐるぐる。 少女「ほら、祭に何を着てこうかなって思ってさ!」 友「あぁ、祭ね、祭。もう今週末だもんねー」 少女「もうそんな季節かぁ……」 がりがり。がりがり。……みーんみーん。 夏です。 幼馴染ちゃん。こちらは夏です。そちらはどうですか?……なーんて。 続きを読む