転載元 : http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1471690589/ 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2016/08/20(土) 19:56:29 ID:XoSc4kLg 昔々或る所に二匹の獣がいた。 親を殺され一人で歩いていた兎を、亀が引き取り親代わりに育てること数年。 その後のことであったと云う。 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2016/08/20(土) 19:57:03 ID:XoSc4kLg 兎「亀よ、貴様の遅速には最早耐えられぬ」 兎「この上は袂を分かち、別々に己の道を極めよう」 亀「我が朋友よ、如何がしたのか」 亀「私が遅速であるのは神代からの理、然しこれまで上手くやっていたではないか」 兎「ええい、亀よ、貴様のその向上心の無さが俺を苛立たせるのだ」 兎「日々の努力を保って超えられる壁もあろうというもの」 兎「にも関わらず、鍛錬無き貴様と同列に扱われることは最早我慢ならぬ」 兎「悪いが出て行く」 亀「出て行くというのならば止めはせぬ。達者でな」 画して兎は己の速さに磨きをかけるべく一人修行の旅に出ることとなった。 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2016/08/20(土) 19:57:54 ID:XoSc4kLg 一年の修行の末に兎は遂に神速を手に入れ意気揚々と亀の元へと帰った。 此の兎、性格が尖っていて同族とよろしくやることなど無理な話であったのだ。 兎「亀よ、帰ったぞ。我が神速をご覧あれ」 兎は一言告げると颯と水面の上に立ち一陣の風の如く水面を渡った。 亀「おお、もう一度見せておくれ。素晴らしき技かな。流石、我が朋友だ」 そう告げた亀が水面の上をスイスイと泳ぐので、もう堪らないのは兎である。 兎「なんと、我が一命を賭した技を既に会得していたとは」 兎「鮫に追われ島へと渡る修行も貴様を感嘆させるには不十分であったようだ」 生来せっかちに出来ている兎は一言そう告げると再び修行の旅へと出てしまった。 続きを読む