転載元 : http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1540993078/ 1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:37:58.459 ID:OlVeHw08D 喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。 ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。 この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。 そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。 いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。 さて、今日のお客様は……。 山花作治(77) 無職 【老人と菊】 ホーッホッホッホ……。」 4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:39:52.315 ID:OlVeHw08D 春。朝、とある住宅街。一軒家。塀の門には「山花」の表札が見える。 居間。テレビのニュースを見ながら、一人で朝食を食べる老人男性。 テロップ「山花作治(77) 無職・元用務員」 テレビ「本日の特集は、IoTです。IoTとは、Internet of Thingsの略で……」 山花(ふん。デジタルだとか、ITだとか……。どんどん世の中が複雑になっていくな……) 食事を終え、テレビを見続ける山花。テレビには公共放送の朝ドラが映っている。 朝ドラは戦前の日本が舞台のようであり、主人公の女性は着物を着ている。 仏間。仏壇に手を合わせる山花。仏間には、山花の妻・秋絵の遺影がある。 山花「…………」 今は亡き妻のことを頭に浮かべる山花。 山花(秋絵……。お前が死んでから、俺は一人ぼっちになってしまったよ……) 5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:41:30.295 ID:fA+OCSkuD 街の郊外を走るバス。バスの中には、山花を含め客が数人いる。山花の後ろにいるのは、喪黒福造だ。 座席を立ち、バスの中を走り回る小さな男の子たち。男の子たちは、大声を出してはしゃぐ。 山花「こらっ、静かにせんか!!みんなの迷惑になるだろうが!!」 男の子たちを叱りつける山花。 男の子たち「すいませーーーん」 しょんぼりした表情で、座席に戻る男の子たち。違和感のある表情で、山花を見つめる乗客たち。 山花(全く……。このボウズどもは、家でどんなしつけを受けているんだ……) バスを降り、歩道を歩く山花。山花の側には喪黒がいる。 喪黒「いやぁ、バスの中でのさっきの一喝……。あれは本当に、胸がスカッとしましたよ」 山花「まあ、その……。私は当たり前のことをやったまでですから……」 7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:43:22.225 ID:fA+OCSkuD とある温泉施設。大浴場。温泉につかる喪黒と山花。 喪黒「ほう……。山花さんは、小学校の元用務員だったのですか?」 山花「そうですよ。だから、さっきは昔の癖が出てしまって……」 喪黒「それで、バスの中で子供を叱ったというわけですね?」 山花「はい」 喪黒「どうやら、山花さんはくそ真面目で曲がったことが嫌いなお方のようですなぁ」 山花「私は昔から、周りにそうよく言われてきました」 喪黒「それでもって、あなたは自分にも他人にも厳しい性格でしょう?」 「だから……。外では話し相手がいなくて、一匹狼の生き方をしてきたのではないですか?」 山花「おっしゃる通りです。私のことを理解してくれたのは妻だけでしたが、妻は数年前に亡くなりました」 喪黒「では、今のあなたは一人暮らしですか?それじゃあ、寂しいでしょう……」 山花「『寂しくない』と言えば嘘になりますよね」 続きを読む