転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434130312/ 1 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/06/13(土) 02:32:02.65 ID:T2hBz8Plo モノローグ的な何か 元ネタあり 2 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/06/13(土) 02:32:39.74 ID:T2hBz8Plo 『はい、秋月です。ただいま電話に出ることができません。ピーと鳴りましたらお名前とご用件をお願いします』 「ああ、律子?明日の収録のことで聞きたいことがあったんだけど……まあいいわ、事務所で聞くから」 事務所に向かう前に私たちのプロデューサー、秋月律子に電話を入れる。 別に急ぎでもなかったのだからメッセージを残さなくてもよかった気もするんだけど。 まあ、律子のことだから着信に気づいたら折り返すだろうし、その手間を省くためと思えば無駄じゃないでしょ。 3 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/06/13(土) 02:33:28.98 ID:T2hBz8Plo その日の仕事も滞りなく終え、私はなんとなく歩きたくなった。 このところずっと忙しかったから気分転換をしたかったというのもあるけど。 風の向くまま気の向くまま、足に任せて事務所への帰路につく。 普段は通らないような裏道、その路地から幼い兄妹が駆け出してきた。 「じゃーねー」 「また明日―」 路地の奥から聞こえる元気な声。 目いっぱい手を振って声に応える兄妹。 何故だか優しい気持ちになれる光景だった。 4 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/06/13(土) 02:34:11.12 ID:T2hBz8Plo 気になって路地を覗くと、そこには黒いアスファルトをキャンパスに、不思議な世界が広がっていた。 白い線路の上を赤い電車が走る。 車窓からは笑顔の人々が手を振っている。 その周りに咲く黄色い花はヒマワリだろうか。 かと思えばそのすぐ横では怪獣が火を噴いている。 怪獣に立ち向かう青い巨人はロボットか何かだろう。 5 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/06/13(土) 02:34:47.05 ID:T2hBz8Plo 無秩序で野放図、この上なく雑然とした世界。 でもなぜか微笑みたくなるような無邪気な世界。 燃えるような夕日に照らされる路地には、そんな世界がチョークで描き出されていた。 私があの子たちくらいの時、こんなことできなかったわね。 国内有数の財閥の令嬢が、狭い路地裏で落書きに興じる。 そんなこと、考えもしなかったけど。 6 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/06/13(土) 02:35:24.66 ID:T2hBz8Plo 別に羨ましいわけでもないし、後悔があるわけでもない。 ただほんの少しだけ、もしもの世界を楽しんでみたくなった。 近所の友達と日が暮れるまで遊ぶ私。 次の約束は、また明日という言葉だけ。 泥だらけで遊んで、家で両親に怒られる。 飾り気のない、キラキラとした世界。 けれど、そんな空想も長くは続かなかった。 私は、今の私が好きだから。 騒々しくも頼もしい、夢を分かち合える仲間と出会えたから。 空想の中の私では、今にたどり着くことはできないから。 続きを読む