転載元 : http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1539874879/ 1 : ◆U.8lOt6xMsuG 2018/10/19(金) 00:01:19.61 ID:TYKVB7XU0 明日の地球を投げ出せないから初投稿です 前作→荒木比奈「ジャスト・リブ・モア」 前作ですが読まなくても大丈夫です 2 : ◆U.8lOt6xMsuG 2018/10/19(金) 00:03:30.43 ID:TYKVB7XU0 二次創作ものの同人誌を書くとき、アタシって、大体決まった形になっちゃうんスよね 元が不幸なお話なら幸せに。幸せなお話ならもっと幸せに。 だって、描いてる方も読む方も、幸せな人たちを見る方がいいじゃないっスか。 少なくとも、あたしはそう思ってまス 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/19(金) 00:04:06.48 ID:TYKVB7XU0 ◆◇◆ 「引退……」 二人だけの会議室で。私の言葉を聞いた彼が、ポツリと呟いた。 「引退、かぁ……」 私が、少し前から抱えていた思いを受け取った彼は、どこかを一点に見つめ、手を忙しなく組み直し、大きく息を吸っては吐いている。 壁掛け時計の秒針が、大きな音を立てる。そんな無言を幾数分。 「正直」 彼が、閉ざしていた口を開く。私もそれに合わせて、顔を上げ彼に向かい合った。 「正直僕は、比奈はまだアイドルとして活躍できると思う」 今のように、いや今以上に、と彼は続けた。 アイドルになって6年。26歳になってからは一月が過ぎた。確かに、まだまだ活動できる年齢ではある。それに、今の私よりも歳を重ねてからアイドルデビューした一だってこの事務所には多い。同じブルーナポレオンの、瑞樹さんや沙理奈さんだってそうだ。二人は、今もこの芸能界で活動を続けている。瑞樹さんは女優業を主にして、と言う形ではあるけれど 「アイドルを引退した後は……歌手なりモデルなりで芸能界にとどまるのか、それとも」 「……後者、っスね」 「……そっか」 彼の声が、一段と暗くなった。静寂が、痛い。 4 : ◆U.8lOt6xMsuG 2018/10/19(金) 00:04:49.51 ID:TYKVB7XU0 どうしてそう決めたのか。いつ頃から考えていたのか。詳しく訊かせてほしい。 彼の質問に、私は一つずつ答えていく。自分がそう思うように至ったまでを話す。言葉を紡ぐには時間がかかって、一時間くらいは話した気がした。実際は15分も経ってなかった 全てを話して、訊かせた後、彼は口元に手を当てて机の上を見つめていた。 「反対したい気持ちだってあるよ。今だってそう考えてる。でも、比奈の意志なら、僕はそれを尊重したい」 「……」 私の方は見ずに、彼は口を動かす。 「比奈が考えて考えて、考え抜いて出した結論なら、僕がそれに反対する義理も道理もないからね」 「……っスか」 「5年も一緒にいるんだ。比奈がどう思っているかくらい、少しくらい分かるよ」 全部は流石に分からないけれど、と彼は初めて笑みを溢そうとした。引きつっていて、お世辞にも笑っているようには見えなかった。 「……引退って意志は、揺るがないんだね」 「……はい」 「わかった」 彼がまた大きく息を吸い込んだ。少し背中を反らせて、また私に向かい合う。 「最後まで、頑張ろう」 真っ直ぐ見つめる瞳。そこに映り込んだ私は、うるんだ瞳をしていた。 続きを読む