615: 長レス失礼 02/11/27 21:16 ID:ykPwApZT 3年前の1月、父が交通事故にあった。 母から連絡を受けて、私と姉は実家の近くの病院に駆けつけた。 脳挫傷。意識がもどる可能性は10%もないと医者に告げられた。 集中治療室のベッドの上、さまざまな機器にチューブでつながれ 頭を白い包帯に巻かれて横たわる父の姿を見ても、まだ私は 涙が出てこなかった。あまりにびっくりしていて。 しばらく病院に泊まり込みになるだろう。実家と病院を行き来するのに、 連絡するものが必要だった。私の持っているPHSは、田舎では電波が通じない。 母に、父の使っていた携帯電話を渡された。 その日の夜。 何も言わずに出てきてしまったから、東京にいる何人かの友達に 「しばらく田舎にいることになった」と電話で知らせた。 みんな言葉につまりながらも慰めてくれた。涙声になる子もいた。 でもまだ私は涙が出てこなかった。 最後の一人への電話をかけ終わると、なんだかドッと疲れた。 すぐに家族がいる待合室に戻る気にもなれなくて、病院の屋上へと 通じる薄暗い非常階段にそのまま腰を下ろした。 なんとはなく、いつものように手で携帯をもてあそんだ。 ふと目が止まった。 携帯電話の充電部分のわずかなくぼみに、赤黒い血がこびりついていた。 救急隊員の手によってか、看護婦さんの手によってか知らないが、 丁寧にぬぐわれたであろうにもかかわらず落ちきれなかった父の血が こびりついていた。 屋上へ通じる非常階段の冷たい壁にひたいをくっつけて、私は、 声をかみ殺して泣いた。 あの日の事は一生忘れられない。 続きを読む