転載元 : http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537666256/ 1: 名無しさん@おーぷん 2018/09/23(日)10:30:56 ID:83a ※地の文の話です。 一部キャラ崩壊してます。 2: 名無しさん@おーぷん 2018/09/23(日)10:31:49 ID:83a 季節は秋で、秋霖の合間を縫うような、空気の澄んだ晴れの日だった。 「……え、なに?」 そんな金曜日の羽丘女子学園の教室で、あたしは幼馴染のモカに言われた言葉が上手く頭の中に入ってこなくて、そう聞き返す。 「だからキャッチボールだよ、蘭~」 「…………」 間延びした声が鼓膜を打つ。 なるほど、キャッチボール。野球のグローブを付けて、ボールを投げ合うというよくある遊びだ。うん、やっぱりあたしの聞き間違いじゃなかったんだ。 それはいいけど、とりあえず。 「……なんで?」 「んー、なんとなく?」 「はぁ……そう」 理由を聞いてみたけど、思った通りの言葉が返ってきた。多分、スポーツ漫画か青春漫画でも読んでやってみたくなったんだろう。モカのことだから。 3: 名無しさん@おーぷん 2018/09/23(日)10:32:50 ID:83a そう思いつつ、窓の外へチラリと視線を送る。 秋口の清涼な空は西へ傾き始めた太陽に赤っぽく染められはじめていた。まだ夜の帳が落ちるには時間があるだろう。 視線を校庭の方へ移す。 “男心と秋の空”とはよく言う諺だ。それぞれの運動部が、移り気な想い人の気持ちを引き留めるように、この貴重な機会を逃すものかと清秋の空気に青春の汗を流していた。 「……巴を誘えば?」 秋の空気は好きだし、その中で体を動かすのはさぞかし気持ちのいいことだろう。 そう思うけれど、あたしの口からはそんな言葉が出る。散歩くらいならいくらでも付き合うけど、正直大きく身体を動かすようなことはあんまりしたくなかった。 4: 名無しさん@おーぷん 2018/09/23(日)10:33:29 ID:83a 「トモちんは今日和太鼓の練習だって~」 「ひまりは?」 「ひーちゃんはバイトで食欲の秋~」 「つぐみは……」 「生徒会の仕事~」 「…………」 「蘭はなーんも予定なっしーん、だよね?」 「……まぁ」 モカはあたしの予定を楽しそうに口にする。 ……みんなと共有してるスケジュール表、あたしもしっかり更新するようにしたから『華道の集まりが』という逃げ道は使えそうもなかった。 「じゃあ決まり~」 「はぁ……」 やりたくない、で逃げることも出来るだろうけど、乗り気になっているモカに水を差すようなことを言うのも少し憚れる。 あたしは観念したようにため息を吐いて、「ほらほら、行こー」と手を引くモカに大人しくついて行くのだった。 続きを読む